2020年1月7日(火)
トランプ政権の無法な軍事力行使を非難し、外交的解決の道に立ち戻ることを求める
志位委員長が声明
日本共産党の志位和夫委員長は6日、国会内で記者会見し、「トランプ政権の無法な軍事力行使を非難し、外交的解決の道に立ち戻ることを求める」と題する声明を発表しました。志位委員長は声明を、米国とイラン、イラクの各国政府に対して伝達するとともに、国連安保理常任理事国のイギリス、フランス、中国、ロシアの各国政府と日本政府に伝達することを表明しました。声明の全文は以下の通りです。
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(1)
1月3日、米国・トランプ大統領の指示により、米軍が、イラクのバグダッド空港で、イラン革命防衛隊・ソレイマニ司令官を空爆によって殺害したことは、中東の緊張を極度に高め、「新たな湾岸戦争」(グテレス国連事務総長)さえ懸念される深刻な事態を引き起こしている。
どんな理由をつけても、主権国家の要人を空爆によって殺害する権利は、世界のどの国にもあたえられていない。それは国連憲章に違反した無法な先制攻撃そのものである。しかも、今回の攻撃は、イラク国内で、標的とされたイラン司令官とともに、イラク民兵組織の幹部らも殺害したという点で、二重、三重に無法なものである。
日本共産党は、トランプ政権による国連憲章と国際法に違反した軍事力行使を、厳しく非難する。
(2)
トランプ政権は、この間、武装組織による米側へのロケット弾攻撃などへの「自衛的対応」という口実で、軍事力行使をエスカレートさせてきた。
しかし、米国とイランの緊張激化は、米側がイラン側の動きと主張している最近の出来事が始まりではない。2018年5月、トランプ政権がイラン核合意から一方的に離脱したことがその出発点であることは明瞭である。
2015年7月に、イランと米国など6カ国と欧州連合(EU)が結んだ核合意は、イラン核問題の平和的解決に道筋をつけた画期的な成果だった。トランプ政権の一方的な離脱と、イランへの「最大圧力」路線への転換は、この国際的な外交努力に重大な逆流をもちこんだ。2019年7月、トランプ政権が、対イラン「有志連合」の結成を呼び掛けるなど、軍事的圧力を強めたことは、緊張をさらに深刻なものとした。
イラン核合意からの離脱によって緊張激化の引き金を引き、今回の無法な先制攻撃によって戦争の危険をつくりだしたトランプ政権の責任はきわめて重大である。
(3)
いま強く懸念されるのは、米国とイラン、また米国の同盟国とイランとの間で、武力衝突が引き起こされる危険である。そうした武力衝突が起これば、中東全体を巻き込んだ恐るべき破滅的戦争に発展する危険がある。
情勢を打開する方策は、外交的解決の道に立ち戻る以外にない。日本共産党は、すべての関係者に最大限の自制を求めるとともに、トランプ政権に対し、軍事力行使をただちにやめ、イラン核合意に復帰することを、強く求める。国際社会が、そうした方向で緊急の外交努力を行うことを、心から呼びかける。
安倍政権が、トランプ大統領の「有志連合」の呼びかけに事実上応える形で、中東沖への自衛隊の派兵を閣議決定したことは、中東の緊張関係が激化するもとで、いっそう無謀かつ危険きわまりないものとなっている。
日本共産党は、安倍政権に対して、自衛隊派兵の閣議決定をただちに撤回することを、強く求める。いま日本政府がなすべきは、トランプ大統領に対して、イラン核合意への復帰を求める外交努力だということを、強調したい。
志位委員長声明での一問一答
日本共産党の志位和夫委員長が、声明「トランプ政権の無法な軍事力行使を非難し、外交的解決の道に立ち戻ることを求める」を発表した6日の記者会見での一問一答は次の通りです。
米国、イランをはじめ関係各国、日本政府に声明を伝達する
(冒頭発言から)
この声明は、本日(6日)、米国とイランおよびイラク政府に対して申し入れとして、伝達する段取りを取っています。また、国連の安保理常任理事国であるイギリス、フランス、中国、ロシアの政府にも伝達する段取りを取っています。日本政府に対しては、本日、穀田恵二国対委員長が、自民党の森山裕国対委員長と連絡を取り、伝達する段取りを取っているところです。そういう形で各国政府ならびに日本政府に対して、声明を伝え、それぞれの努力を求めたいと思います。
とくに、アメリカに対しては、無法な軍事力行使をただちにやめて、外交的解決の道に立ちもどること、とりわけイラン核合意への復帰を強く求めていきたい。
首相会見――米国の武力行使への批判が一切ないことが大問題
――安倍総理が(6日の)記者会見で、「中東情勢について現状を深く憂慮している」「すべての関係者に緊張緩和のための外交努力をつくすことを求める」と述べたが、具体的には、米国の攻撃に対しての批判や支持、理解など言及がなかったことについてどう受け止めていますか。
志位 「中東地域が緊張の度を高めている」と安倍首相は言ったが、誰がその緊張をつくったのか。その根源はどこにあるのかということが問題です。それに対する言及、批判が一切ない。これが大問題です。
事態の根源は、トランプ政権のイラン核合意からの一方的離脱にあります。これが緊張をつくりだした出発点にあったのです。
今回のイラン司令官の殺害は、主権国家の要人の殺害です。どんな理由があったとしても、主権国家の要人を空爆で殺害することは、国連憲章に違反した無法な軍事力行使です。それに対する批判なしに、ただ、「緊張の度を高めており、現状を深く憂慮する」と言い、ただ、「全ての関係者に緊張緩和のための外交努力をつくすことを求める」と言っても、何の意味もありません。問題は、アメリカの無法をきちんと批判するかどうかです。
戦後、自民党の歴代政府が、アメリカが行った数々の武力行使について、国際法違反として批判したことは一度もありません。
安倍首相が、この明々白々な国際法違反に対してどういう態度をとるか、私は注目して(首相の会見を)聞きましたが、一切、批判的なコメントはありませんでした。
そして、この「記者会見」は一体、何なのかと率直に思いました。(メディアの)誰一人として一番問われるべき点を問おうとしなかった。
アメリカの武力行使を是とするのか非とするのか、一番肝心な点を誰も問おうとしなかった。これで、メディアの役割を果たし得るのかと思います。
「外交努力」といいながら自衛隊派兵――言っていることと、やっていることが全く違う
志位 もう一点は、(安倍首相は)会見で、「全ての関係者に緊張緩和のための外交努力をつくすことを求める」といいながら、自衛隊の中東沖への派兵はやるという。言っていることとやっていることがまったく違うではないですか。
トランプ米大統領が対イラン「有志連合」を呼びかけたことに、事実上応えて、安倍政権は、自衛隊を出すことを決めました。軍事力の展開によってこの地域に重大な危険をもたらそうとしています。まさに、トランプ米大統領のお先棒を担いでいます。「外交的努力をつくせ」と言っていることと、実際にやっていることが全然違う。安倍首相は「(イランと米国の)橋渡し外交」だといいます。しかし、イランの側には核合意を順守せよと言い、トランプ大統領に対しては核合意への復帰を一言も言わない。これは普通「橋渡し」とは言わない。お先棒外交です。
こういう二つの大きな問題点があります。日本政府の立場も徹底的にただしていかなければなりません。自衛隊の派兵は直ちにやめるべきです。
この問題は、ぜひ野党でもよく相談して、協力して対応していきたいと考えています。