2020年1月6日(月)
カジノ汚職 批判に背
管理委あす設置 解禁日程強行
カジノ汚職の深刻な疑惑の連鎖が広がるなか、安倍晋三内閣は7日、カジノを統制する新たな行政組織であるカジノ管理委員会(委員長・北村道夫元福岡高検検事長)を設置します。事件発覚を受けカジノへの厳しい批判の声があがっているのに、政府のカジノ解禁スケジュールをそのまま進めることは許されません。(竹腰将弘)
|
“政策買収” 疑惑は深刻
同委は、公正取引委員会などと同等の独立性をもつ国家行政組織法の「三条委員会」として内閣府の外局に設置されます。今後のカジノ解禁への動きのスイッチとなるもので、野党は先の国会で設置に強く反対しました。
菅義偉官房長官は昨年12月26日の会見で、カジノ汚職が今後のカジノ解禁に与える影響を問われ「政府としてはできるだけ早期にIR(カジノを中核とする統合型リゾート)の整備による効果が実現するように、IR整備法などに基づいて必要な準備をすすめていきたい」と、たんたんと政府のスケジュールを進める考えを示しています。
今回の事件は、国内カジノ解禁の根拠となるカジノ実施法の根幹にかかわる深刻な疑惑を投げかけています。
自民党衆院議員(離党)に370万円相当の賄賂を贈った中国のカジノ企業は、その見返りに、国内のIR設置数を増やすよう求めたとされています。
国内のカジノ設置箇所数については、カジノ推進派でつくるカジノ議連(国際観光産業振興議員連盟)が2013年に開いた総会で「2~3カ所に限定する」(岩屋毅議連幹事長=前防衛相)と表明するなど推進派の中でも「当面3カ所」が常識となっていたものです。
ところが、カジノ実施法が閣議決定される直前の18年2月14日の同議連総会で、北海道の高橋はるみ知事(当時、現自民党参院議員)が「全国4~5カ所の区域決定を」と述べるなど、巻き返しが起こり、与党協議で自民党が「4~5カ所」を強く求めました。
制度の根幹にかかわる変更が、賄賂を使った海外カジノ企業の要求に応えるように持ち出されたことは極めて重大です。
ほかにも海外カジノ企業の意向にそって日本のカジノの制度がもてあそばれた事例があります。
政府のカジノ推進会議が17年7月に公表した報告書では、カジノの最大面積は「1万5000平方メートル、IR施設全体の3%まで」とされていました。
海外カジノ企業はこれに猛反発。米ラスベガス・サンズの幹部は「割に合わない」、米MGMの幹部は「思うようなカジノができない」と批判しました。結果的にカジノ面積の上限規制から「1万5000平方メートル」という絶対値の規制は外され、IR全体の施設面積を巨大なものにすればマカオなみの世界最大級のカジノを作れる制度になりました。
昨年12月の与党の税制改定大綱では、カジノでの客の「勝ち金」課税のため、財務省が海外客への源泉徴収などの方策を提案しましたが、海外カジノ企業が反発。岩屋前防衛相が「事業者の事務負担が重くなり、日本のカジノへの投資意欲を減退させかねない」と主張し、課税措置の明記が見送られました。
徹頭徹尾、海外カジノ企業の思惑に応えながらすすんできた日本のカジノ解禁の動きの背後に政治家との癒着はないのか―。解明が求められます。
■安倍政権が描くカジノ解禁へのスケジュール
2020年
1月7日 カジノ管理委員会設置
1月中 政府のカジノ「基本方針」正式決定
2月~ 誘致自治体の動き
・カジノ「実施方針」策定
・カジノ事業者の公募・選定
・公聴会開催、議会の議決
2021年
1月4日~7月30日 誘致自治体が国に「区域整備計画」を申請
夏以降 国土交通大臣がカジノ「区域整備計画」(上限3カ所)を認定