2019年12月23日(月)
主張
カジノ誘致の攻防
日本のどこにも賭博場いらぬ
安倍晋三政権が国内3カ所とするカジノを中核とした統合型リゾート(IR)設置区域の選定基準を示すなか、カジノ誘致自治体や進出をめざす海外のカジノ事業者の動きが激しさを増しています。「カジノ反対」の声は全国どこでも圧倒的な多数であり、カジノ誘致を許さぬ地域の運動も本格的な広がりをみせています。
「世界最大」の矛盾あらわ
政府はカジノを統制する新たな行政組織である「カジノ管理委員会」を2020年1月7日に設置し、同月中にカジノ立地区域の選定基準などを示す「基本方針」を正式決定するとしています。
これを受け、カジノ誘致をめざす都道府県・政令市は「実施方針」の策定、カジノ事業者の公募・選定、国に申請する「区域整備計画」策定と、誘致に向けた作業を加速させます。それは、カジノ反対の大多数の世論に真っ向から逆らう道です。
安倍首相は今年3月、カジノ施行令の閣議決定に際し「世界中から観光客を集める滞在型観光の実現へ、これまでにないスケール(規模)とクオリティー(質)を求め、世界最高水準のカジノ規制を具体化する」とのべました。
施行令では、カジノに併設する施設規模の要件として、ホテルの床面積10万平方メートル以上、国際会議場6000人収容以上、展示場12万平方メートル以上など、国内にこれまで例がない巨大な規模の施設設置を要求しました。その矛盾があらわになっています。
カジノ誘致に意欲を示していた北海道は11月に「断念」を表明しました。国の施設要件を満たす提案をしたカジノ事業者はなく、あまりに巨大な施設が立地予定地にもたらす環境負荷を考慮せざるをえなくなった結果です。
IRは利益の8~9割をカジノ売り上げが占める施設です。大阪府・市が同市内の夢洲(ゆめしま)に計画するIRは、全体収益年間4800億円の8割、3800億円をカジノ売り上げが占めると見込んでいます。
IR全体の施設規模が巨大化した結果、その“収益エンジン”となるカジノも、「世界最大規模」の巨額の利益をあげ続けなければなりません。必然的に、多数の人々をカジノ漬けにし、ギャンブル依存症などの悲劇をかつてない規模で広げることになります。
IRの事業期間の問題も深刻です。誘致自治体はカジノ事業者との間で結ぶ「実施協定」で30~40年間に及ぶ長期の事業期間を決めます。その期間内には、自治体側から事業の中止を申し出ようとしても、事業者側から協定違反で巨額の損害賠償を求められる恐れがあります。目先の利益だけでカジノにいったん手を出したら、引き返せなくなるのは必至です。
カジノへの参入を狙った中国のカジノ事業者が多額の資金を日本に持ち込んだ外為法違反事件で、内閣府のIR担当副大臣だった自民党の秋元司衆院議員の関与が浮上したことも重大です。
全国各地で運動広げ
市民団体の「全国カジノ賭博場設置反対連絡協議会」は来年1月にカジノ反対運動の全国交流と総決起の集会を開きます。各地の運動で、カジノ誘致計画を一つ一つ打ち破っていくことが、日本のどこにも賭博場をつくらせない力となります。