2019年12月22日(日)
イスラエル「戦争犯罪」捜査
国際刑事裁判所
人権団体「歴史的な一歩」
国際刑事裁判所(ICC、本部オランダ・ハーグ)のベンスダ主任検察官は20日、声明を出し、イスラエル占領下のパレスチナ自治区・ヨルダン川西岸やガザにおける「戦争犯罪」について、正式に捜査を開始すると明らかにしました。パレスチナでのイスラエルの戦争犯罪を追及する「歴史的な一歩」(国際人権団体)と歓迎の声が上がっています。(鎌塚由美)
ベンスダ主任検察官は、声明で「ガザ地区、東エルサレムを含むヨルダン川西岸で戦争犯罪が行われてきた」と指摘。これまでのICCの予備捜査の結果、「パレスチナの状況に関して捜査を進める合理的な根拠がある」と判断しました。ただ加害者は特定していません。
またパレスチナを国家として扱うかどうかで議論が分かれることから、「ICCが管轄権を持つ地域かどうか、ICC裁判部に判断を求めた」と述べました。ベンスダ主任検察官は裁判部に対し、「迅速な判断」と、被害者らの裁判への参加も認めるよう求めました。
パレスチナは2015年にICCに加盟。イスラエルによる軍事攻撃や入植活動に対するICCの捜査を要請していました。パレスチナ自治政府のマルキ外相は20日、「約5年におよぶ予備捜査を経て、遅きに失したとはいえ、捜査に向けた措置を歓迎する」と表明しました。
一方、イスラエルのネタニヤフ首相は同日の声明で「ICCは主権国家による要請に限り管轄権を持つ。パレスチナ国家などというものはない」と、捜査に対して徹底的に抵抗する考えを示しました。イスラエルはICCに加盟していません。
イスラエルと同様にICCに加盟していない米国のポンペオ国務長官は同日、「イスラエルを不当に標的にする今回の措置に強く反対する」と声明を出し、イスラエルを擁護しました。
イスラエルによるパレスチナでの戦争犯罪と人権侵害を告発してきた国際人権団体アムネスティ・インターナショナルの中東・北アフリカ担当者は20日、「占領されたパレスチナ領内で数十年にわたる戦争犯罪や国際法違反を裁く歴史的な一歩だ」と声明で歓迎。「このたびの(ICCの)表明は、戦争犯罪および人道に対する罪への免罪の循環を打ち破る決定的な好機だ」と述べました。