2019年12月12日(木)
米国防費 大枠80兆円
20会計年度予算 市民団体「破滅的」
核配備禁止など歯止め部分後退
【ワシントン=池田晋】米議会与野党は10日までに、2020会計年度(19年10月~20年9月)の国防予算の大枠を定める国防権限法案の一本化協議が合意に至ったとして、7380億ドル(約80兆円)に及ぶ最終案を公表しました。上下院は異なる内容の法案をそれぞれ可決し、一本化が難航していましたが、下院案に含まれていた画期的内容の多くが削除され、平和・環境団体から「破滅的」などと批判の声があがっています。
国防権限法は、国防費の大枠を定めるだけでなく、軍の給与水準から対中政策といった外交方針まで、多岐にわたる内容が毎年盛り込まれます。7月に可決された下院案には、▽議会承認のない対イランへの武力行使禁止▽低爆発力核弾頭の配備禁止▽中東イエメンの内戦に介入するサウジアラビアへの軍事支援打ち切り―といったトランプ政権の政策に歯止めをかける内容が含まれていました。
最終案からはこうした内容が脱落する一方、トランプ氏が強い意欲を示す6番目の新軍種となる宇宙軍の創設を承認。F35戦闘機の調達についても、政権要求に12機分(約10億ドル)を上乗せしています。
平和団体ピース・アクションや核時代平和財団、環境団体の生物多様性センターなど、30以上の市民団体は共同で声明を公表。最終案は与野党の「妥協案でなく、ほとんど降伏文書だ」と指摘。「トランプの無謀な外交政策への白紙委任状だ」とも非難しています。
ホワイトハウスは10日、報道官名の声明で「大統領の優先政策の多くを前進させるものだ」と歓迎し、議会を通過すれば署名する意向を示しました。