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2019年11月30日(土)

イギリス総選挙 無料・国営医療が争点に

緊縮でスタッフ不足深刻

米大企業参入 民営化の恐れ

 【ロンドン=伊藤寿庸】12月12日投票の英国総選挙では、欧州連合(EU)離脱問題に次いで国民保健サービス(NHS)が大きな争点になっています。原則無料の国営医療制度は、英国民の誇りですが、保守党の緊縮政策によって、医療スタッフ不足や過重負担、患者の待ち時間の長期化や手術の先送りなどが常態化しています。

 NHSの救急部門での待ち時間は深刻です。到着から4時間以内に診察を受けることができた患者の割合が、10月に83・6%と、2015年7月の調査開始以来最低だったことが判明しました。

 保守党は、「病院40棟の新規建設」「看護師5万人増員」などを公約。ただ実際には改築の認可待ちの六つの病院への予算措置にとどまり、看護師「増員」の中には退職意向の現職1万8500人の慰留などが含まれていたことが判明。メディアからも「看板に偽りあり」と批判されています。

 労働党は、今後5年間毎年4・3%ずつ、総額260億ポンド(約3兆7000億円)の予算増などを公約。徐々に進む民営化をやめるとともに、保守党が廃止した看護学生への奨学金を復活させるとしています。

 労働党のコービン党首は27日、英政府当局者が17~19年に米医薬品企業幹部と行った面会の記録450ページ超を公表。政府が昨年来、医薬品価格を低く抑えるNHSのルールの廃止などを議題にしていたと批判。米国との自由貿易協定は「NHSの野放図な民営化につながる。ジョンソン氏とトランプ米大統領との連携で、大企業が大もうけしようとしている」と非難しました。

 ジョンソン首相は、選挙戦で繰り返し病院を訪問し、NHS重視をアピール。コービン氏が公表した文書にも「ナンセンスだ」と反論し、「いかなる状況でも、NHSを貿易交渉の議題に乗せないと絶対に保障する」などと力説しています。

 英紙ガーディアンによると、英国医師会は、「NHSが米国との貿易交渉の議題となることがあってはならない」と指摘。王立看護協会も「他国との貿易協定の促進のために医療が利用されることはだれも望まない」と述べ、警戒感を示しています。


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