2019年11月27日(水)
きょうの潮流
長く「借りた場所、借りた時間」だったこの地に自己意識がめばえるようになったのはいつ頃でしょうか。99年にわたるイギリスの租借地として、その後の50年は「一国二制度」のなかで▼われわれは香港人―。中国返還後、減り続けていたこうした意識が増加に転じたのは10年ほど前から。とくに10代、20代の若者に顕著なのが香港大学の民意調査に表れています。中国統治の強まりと軌を一にして▼自己の存在をみつめる地で圧倒的な民意が示されました。香港政府への抗議がつづくなか、民主派が区議選で8割をこえる議席を得て圧勝。親中派を大惨敗に追い込みました。過去最高の率で一票を投じた人びとは「香港人の勝利」だと▼迫る一国支配、脅かされる自治。それに抗し、自由と民主主義を守ろうとする若者や市民に政府は刃を向けてきました。実弾の発砲をはじめ凶暴化する警察。弾圧で追いつめられた一部の若者の行動が激化する悪循環を招いています▼香港政府の強硬な対応には、国家を人権の上に置くような中国政権党の指導と承認が背景に。鮮やかな民意についても、王毅(おう・き)外相は「香港を混乱させるあらゆるたくらみも目的を達することはない」と断言しました▼いま民主化をもとめる人びとが口にする「香港に栄光あれ」という歌があります。「夜明けだ/取り戻せ/わが香港を/みな正義のため/いま革命を/どうか民主と自由が永遠であれ/香港に栄光あれ」。大国の横暴にたいするたたかいは世界を励ましています。