2019年11月27日(水)
主張
香港・民主派圧勝
明確な民意に従い弾圧中止を
劇的に市民の意思が示されました。香港で24日投開票された区議会選挙で、(1)逃亡犯条例改定案の完全撤回(2)デモは「暴動」との定義の撤回(3)拘束されたデモ参加者の釈放と不起訴(4)独立の委員会による警察暴力の調査(5)真の普通選挙の実現―の五大要求を掲げた民主派が全議席の8割超を獲得し、圧勝しました。香港政府・中国指導部は、結果を重く受け止め、自由・民主主義・人権に対する弾圧政策をただちに中止すべきです。
重大な中国政府の態度
地方議員を選ぶ香港の区議選は、間接選挙の行政長官、一部だけが直接選挙の立法会(中央議会)議員と異なり、ほぼ全員を有権者の直接投票で選びます。この間の大規模デモを主導してきた民主派の諸政党・グループは、これを五大要求に関する住民投票と位置づけ、有権者に投票と支持を呼びかけてきました。
同派の獲得議席は、452議席中388で4年前の前回より260余りの増、得票率も57%と躍進。投票率は前回47%から71%に伸び過去最高で、投票総数は倍増です。「香港人は歴史をつくった」(香港メディア)―。市民はデモだけではなく、投票行動で自分たちの声を大きく響かせたのです。
これにたいし林鄭月娥(りんてい・げつが)行政長官は記者会見で、「市民の声を真摯(しんし)に受け止める」と述べたものの、広範な市民が求めている警察のデモへの暴力を調査する独立委員会の設置などにはこたえませんでした。中国外務省の副報道局長は、選挙による住民の明確な審判への言及を避け、「暴力・混乱阻止と秩序回復が、香港の現在の最も差し迫った任務だ」と強調し、抗議行動への香港警察の弾圧を引き続き支持する姿勢を示しました。
中国政府は今年6月、香港で自由と民主主義を求める、全体として平和的な大規模デモが起こった当初から、「組織的暴動」と非難しました。香港に隣接する深圳に武装警察部隊を展開し武力による威嚇を行い、今月初めに香港警官が丸腰のデモ参加者に実弾発砲した際も「当然だ」と擁護しました。デモ参加者が暴力を自制することは大切ですが、ここまで深刻な事態を招いた責任は、香港政府と中国政府による弾圧にこそあります。
表現の自由と平和的な集会は、国際的な人権法、香港基本法でも明確に認められている正当な権利です。香港区議選の当選者や市民らは、あらためて街頭で警察の弾圧への抗議や五大要求すべての実現を訴えました。近く再び大規模な集会も開く構えです。
抗議活動の抑圧を進めてきた香港当局とそれを支持・指導してきた中国政府にノーを突き付けた今回の選挙結果。「一国二制度」のもと、香港の事態の平和的な話し合い解決につながるよう強く期待されています。国際社会は中国指導部に弾圧の即時中止を求めることが重要です。
日本政府はモノ言うべき
日本の安倍晋三首相、茂木敏充外相は、香港区議選の結果が明らかになった25日、来日した中国の王毅(おう・き)外相と会談しましたが、香港での弾圧中止を直接求める発言はありませんでした。来春の中国の習近平国家主席の訪日を優先しているとすれば重大です。大国にも「言うべきことを言う」姿勢こそ、日本外交に必要です。