2019年11月23日(土)
主張
米国の入植容認
中東和平・国際法に反する暴挙
米トランプ政権は18日、イスラエルが占領しているヨルダン川西岸でのユダヤ人入植について、41年間の米政権の方針を転換し、米国としてこれを認めることを表明しました。同日、記者会見したポンペオ米国務長官は、これまで米政権がとってきた「国際法に違反する」との姿勢を百八十度変えたことについて、「現実を認めた」と主張しました。戦争による領土拡大は認められないという国際関係の原則を否定して入植を当然視するイスラエルを後押しする暴挙です。即時撤回すべきです。
戦争での領土拡張は違法
イスラエルの占領地について見解を示した国連安保理決議242(1967年11月)は、イスラエル軍の占領地からの撤退を要求するとともに、領土不可侵を原則に、「全ての国の主権、領土保全」を明快に述べています。
この決議採択では、イスラエル寄りの姿勢をとってきた米国も賛成しました。さらに78年に当時のカーター政権がイスラエルの入植活動について「国際法に違反」との見解を示し、その後の米政権も同様の立場をとってきました。
トランプ政権になってイスラエル政策は大きく変化し、2017年12月に、エルサレムをイスラエルの首都と承認、18年5月に米大使館をテルアビブからエルサレムへ移転しました。1967年の第3次中東戦争でイスラエルによって占領された東エルサレムを含むエルサレム全体をイスラエルの首都と認定し、大使館を移転することは、武力による領土拡張を是認することになります。さらに「東エルサレムを将来の首都に」とのパレスチナ側の主張を完全に踏みにじるものです。
入植容認という今回の米国の方針転換に、パレスチナのアッバス議長の報道官が「米国には、国際的に正統性を持つ(国連安保理)決議を否定する資格も権威もない」と批判するのは当然です。
欧州連合(EU)のモゲリーニ外相は「イスラエルに対し、占領国としての義務に従ってすべての入植活動を終わらせることを求める」との声明を出しました。
トランプ政権がイスラエル問題で強硬措置をとる背景として、来年の大統領選挙を前にして、米国のキリスト教福音派の支持を得る狙いが挙げられています。
41年ぶりとなる米国の方針転換にイスラエルのネタニヤフ首相は「歴史的な誤りを正した」と歓迎しました。首相府は18日の声明で、占領地への入植を禁じた国際法の解釈を「歴史や事実に注意を払っていない」として受け入れず、入植を正当化しています。
しかし米メディアは厳しく、ワシントン・ポスト(電子版20日付)の論評は、占領地への入植を「国際法違反」としていた米の外交政策を転換したことに憂慮を表明しました。パレスチナとの2国家共存が「非常に難しくなった」と中東和平に影を落とすことを指摘しました。
日本は米国に撤回求めよ
国連人権高等弁務官事務所報道官は19日、「一つの国が政策を変更しても、既存の国際法、安保理の解釈が変わることはない」と述べています。安倍晋三政権は、「入植活動は国際法違反とのわが国の立場は変わらない」と述べるだけでなく、米政権に対し方針転換の撤回を要求すべきです。