2019年9月20日(金)
主張
マイナンバー
なりふり構わずカード普及か
安倍晋三政権がマイナンバーカードの普及を促進させるための動きを本格化させています。10月からの消費税増税「対策」の一環であるキャッシュレス決済のポイント還元の仕組みを使い、カードを持っている人を優遇する案の具体化を始めました。医療機関窓口でのカード利用開始に向けた準備なども加速させています。しかし、カードが国民の中に広がらないのは、多くの人が必要性を感じないとともに、個人情報管理などに不安を抱いているからです。普及ありきのやり方は矛盾を広げるだけです。制度存続の是非を含め、抜本的に見直すことが必要です。
「消費活性化」のため?
マイナンバーは、日本国内で住民登録した全ての人に12桁の番号を割り振り、税や社会保障などの分野で、個人情報の特定・確認ができるようにする仕組みです。
個人が任意で申請するマイナンバーカードの枚数は約1780万枚(普及率約14%)と交付から3年半もたつのに、ほとんど広がりません。政府は、顔写真付きのマイナンバーカードは身分証明書にも使えるなどと盛んに宣伝しますが、取得手続きも煩雑であり、国民は必要性を感じません。個人情報の漏えいやカードの紛失・盗難への危惧も根強くあります。
ところが安倍政権は、国民の不安を置き去りにしたまま、なりふり構わずカードの大幅な普及に突き進もうとしています。今月3日のデジタル・ガバメント閣僚会議は、その推進のための方針や具体策を打ち出しました。
その一つが、マイナンバーカードを持つ人がスマートフォンのキャッシュレス決済を使う場合、国のお金でポイント(マイナポイント)を上乗せする仕組みの導入です。カード保持者がスマホに2万円を事前入金(チャージ)すると、1人1回のみ5千円分のポイントをつける案が有力視されています。10月からの消費税増税「対策」のキャッシュレス決済のポイント還元が2020年6月に終わるため、その後の「消費活性化策」にも活用しようというもくろみです。
消費税増税を国民に押し付けるために多額の税金を費やす「増税対策」そのものが大問題であり、消費拡大効果も疑われています。ましてや国民が求めていないマイナンバーカードを押し付けるため、「増税対策」の名目で国費を使うことに、全く道理はありません。
政府は20年度末までに6000万~7000万枚のカード発行を目標にしています。必要額は数千億円に達するおそれもあります。政府は、マイナンバー導入の大きな理由に“効率化で行財政の無駄をなくす”ことを挙げましたが、これこそ浪費ではないのか。ここまで国費を投じなければ普及が進まないこと自体、制度の行き詰まりを示しています。
混乱を拡大させる危険
21年から医療機関窓口でマイナンバーカードを健康保険証としても使えるようにするための準備も推進する計画です。しかし、病院などでのカード利用は窓口対応を複雑にし、職員の多忙化に拍車をかける上、患者にとってもメリットはありません。カードを持ち歩くリスクの方がかえって高まります。問題だらけのマイナンバーカードの普及を無理やり推し進めることは、新たな混乱を引き起こし、危険を広げるだけです。