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2019年9月17日(火)

主張

保育所待機児童

深刻な状況を打開できてない

 認可保育所(園)などに入所を申し込んでも入れなかった子どもは、今年4月1日時点で1万6772人にのぼります。厚生労働省が今月初めに発表しました。昨年より3123人減少したものの、なお1万6000人以上が待機児童となっている現実は深刻です。認可園などに入れなかったのに、別の基準によって待機児童に算入されない「隠れ待機児童」はさらに数多くいます。希望する保育施設に子どもを預けることができない事態が続いていることは大問題です。抜本的解決のために政治の真剣な取り組みが急がれます。

切実な要求に追い付かず

 厚労省の待機児童数の発表(6日)は、保育所入所が“狭き門”のままであることを改めて示しました。全体では2年連続で待機児童は減りました。しかし、都市部を中心に厳しい状況に変わりはありません。安倍晋三政権は、「保育の受け皿」約305万6000人分を整備したとしています。にもかかわらず、まだまだ多くの待機児童が生まれていることは、政府の対策の規模では追い付かず、整備した施設の内容も、国民のニーズとかみ合っていないことを浮き彫りにしています。

 その象徴は、いわゆる「隠れ待機児童」です。厚労省は「特定の施設だけを希望している」「自治体独自の認可外施設を使っている」などの場合は、待機児童としてカウントしていません。そのような子どもは、「企業主導型保育」の利用者も合わせると8万人を超えるとみられます。「特定施設を希望」したから待機児童に数えないとしていることには、実態を反映していないとの批判が絶えません。紹介された施設が、自宅からあまりに遠かったり、通勤経路から外れていたりするなどして辞退した場合も「特定施設の希望」として扱われるからです。

 「自治体独自の認可外施設」の利用者が除外されていることも問題です。いくつも認可園に申し込んでも全て入所できなかったため、認可外施設を使うという人が少なくないからです。政府は、待機児童を少なく見せるような集計でなく、「隠れ待機児童」を含めた潜在的な保育ニーズをきちんと掌握し、それにふさわしい規模とスピードで認可保育所の大幅増設を推進していくことこそが必要です。

 安倍政権は、「企業主導型保育」を待機児童解消の「切り札」と位置付け、これまでに約8万6000人分の「受け皿」を整備したといいます。しかし、定員割れ、保育士への給与未払い、助成金詐取など保育の質にかかわる問題が続発しています。政府は利用者数など実態もきちんとつかんでいません。問題噴出の企業主導型保育に固執する対策をやめ、行政が指導・監督に責任を持った仕組みに改めることが求められます。

保育士の処遇改善を急げ

 保育士が確保できず、認可保育所の設置を断念せざるを得なかった自治体は後を絶ちません。保育所を増設する上で、大きな障害になっている保育士不足の解消は文字通り待ったなしの課題です。

 他の職種を下回る低賃金、休憩もできない長時間労働などの過酷な労働条件を解決し、保育士が安心して、やりがいをもって働けるようにするのは国の責任です。財源を確保し、保育士の処遇改善をはかることが重要です。


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