2019年8月30日(金)
英首相が“議会封じ”
「合意なき離脱」狙いに反発も
【ベルリン=伊藤寿庸】ジョンソン英首相は28日、9月初めに再開される議会をいったん閉会とし、10月14日に新たな会期の開会を告げる「女王演説」を行うと発表しました。ジョンソン氏は10月31日に、欧州連合(EU)からの離脱を何としても実現するとしており、野党などは「合意なき離脱」に反対する議会の動きを封じることが狙いだと反発しています。英国各地で「クーデターを止めろ」「民主主義を守れ」とデモや集会が開かれています。
ジョンソン首相は、「女王演説」は、国民保健サービス(NHS)や犯罪、インフラ建設など政府の取り組む優先課題をいち早く打ち出すためだとし、「この国を前進させる計画に取り掛かる」のにEU離脱まで待ってはいられないと主張しました。
これに対しバーカウ下院議長は、「議会にEU離脱を討議させないことが目的なのは火を見るよりも明らかだ」と反発しています。
労働党のコービン党首は、「民主主義に対する強盗行為だ」と批判。議会閉会を阻止するために女王に書簡を出したほか、「総選挙や国民投票で信を問え」と求めています。
保守党のハモンド前財務相は、「きわめて非民主的」だと指摘。スコットランド保守党のデービッドソン党首は、同日辞任を表明しました。
EU残留派が多数を占めるスコットランドのスタージョン自治政府首相は、「英国民主主義にとって暗黒の日だ」として、議員が協力して政府の計画を阻止するよう求めました。
政府のウェブサイトでは、議会の閉会を阻止するための請願署名が短期間に120万人を超えました。またスコットランドの裁判所では、スコットランド民族党(SNP)議員の訴えで、議会の閉会を差し止めるための法的措置を審理しています。
他方で、EU離脱を支持した人たちの中には、ジョンソン首相の決定を支持する人もいます。ジョンソン首相は、EU離脱を強行したうえで、来る総選挙で「国民の意思を実現した」との実績を訴える方針です。
英紙タイムズは、この閉会期間は「過去40年で最長」と報じました。