2019年8月17日(土)
大阪カジノ 政府が加勢
25年万博前開業へ“逆算し日程”
府・市に首相側近ら 「日経」主催フォーラム
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安倍晋三政権が「当面3カ所」とする国内のIR(カジノを中核とする統合型リゾート)をめぐる誘致自治体間の争奪戦が激化するなか、2025年5月に開催予定の万博と一体に大阪市内の人工島・夢洲(ゆめしま)へのカジノ誘致をねらう大阪府・市への政府・与党の優遇ぶりが露骨になっています。日経新聞社が主催したIRフォーラム大阪(8日)で浮かんだものは―。(竹腰将弘)
フォーラムは米ラスベガスのMGMなど海外カジノ企業3社の協賛を受け、市内の高級ホテルに大阪カジノへの参画をめざす企業関係者ら700人を集めて終日行われました。
府・市の吉村洋文知事、松井一郎市長も出席し「万博めざして夢洲IRを必ずと国ともぎりぎりの交渉をしてきた」(松井氏)と、大阪府・市の先行ぶりを盛んにアピールしました。
超党派のカジノ議連(国際観光産業振興議員連盟)でカジノ解禁をリードしてきた安倍首相側近の萩生田光一自民党幹事長代行、公明党の遠山清彦衆院議員が現在の政府の動きを伝えました。
公表“確約”
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フォーラム参加者の最大の関心事は、カジノ開業までのプロセス・スケジュールがどうなるかでした。カジノの統制機関として新たに内閣府の外局に置かれるカジノ管理委員会の開設が遅れ、プロセスに大きな狂いが生じているからです。
政府は、国会の同意を必要とする委員長と4人の委員の人事案を先の通常国会に示さず、当初のもくろみだった7月1日の委員会設置が先送りされました。萩生田氏は「参議院選挙の前にこの問題にふれたくないという政治的配慮があった」と裏事情を明かしました。
このため、誘致自治体の今後の作業の前提となる国の「基本方針」公表の時期が見通せなくなり、自治体やカジノ事業者側に大混乱が起きています。
遠山氏は、カジノ管理委員会の設置は来年の冒頭で、基本方針はそのあとに閣議決定されるという見通しを示したうえ、「基本方針の中身については先に公表するので、それを見て準備を本格化していただきたい」とのべました。
カジノ管理委員会がまだ立ち上がってもいない段階で、政府として基本方針の案を今秋にも公表するから、それに基づき準備作業を加速化してほしいというドタバタぶりです。
案は公表後、一般からの意見をきくパブリックコメントに付されます。その結果を待たずに自治体の作業が始まるのですから、国民の声をあまりにも軽視したやり方です。
大阪ありき
萩生田氏は「25年の大阪万博より前に夢洲のIRが開業していることが望ましい」とのべ、「そこから逆算して」国のスケジュールを立てる考えを示しました。
参加者からは「大阪ファーストですべてが決まっている」というぼやきのような声も上がりました。
フォーラムの全体をみたカジノ問題を考える大阪ネットワーク代表の桜田照雄阪南大学教授は「既成事実を積み重ね大阪に誘致する条件を整えたようにみせても、さまざまな問題が噴き出すのはこれからです。いよいよ住民の反対運動が大切になる」と語りました。