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2019年8月3日(土)

韓国を優遇対象国除外

安倍外交 破綻の末の暴走

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 政府は2日、安全保障上の輸出管理をめぐる優遇対象国(旧「ホワイト国」)から韓国を除外することを閣議決定しました。破綻した安倍外交が進路を見失った末の暴走行為であり、日韓関係に不毛な対立を生みだし、国益を大きく損ねるものです。

報復措置は明白

 問題の発端となったのは、経済産業省の突然の表明(7月1日)です。「日韓間の信頼関係が著しく損なわれた」として「韓国との信頼関係の下で輸出管理に取り組むことが困難になった」と表明。半導体材料3品目を輸出規制する方針を示しました。これらは武器に転用されるおそれがあるとして、国際的な輸出管理の対象になっている品目です。

 世耕弘成経産相は翌日の記者会見で、元徴用工問題について「G20(首脳会議)までに満足する解決策が得られなかった」ため、「韓国との信頼関係が著しく損なわれた」と指摘。さらに安倍晋三首相は7月7日のフジテレビの党首討論で「徴用工の問題で、国と国との条約(日韓請求権協定)を守らない国であれば(安全保障上の)貿易管理をしているかどうかわからないと考えるのは当然だ」などと述べました。

 こうした経過から、政府の一連の対応は元徴用工問題での報復措置であることは明白です。政治的紛争の解決手段として貿易問題を使うという、政経分離の原則に反する道理のない対応です。

 菅義偉官房長官は2日の記者会見で、「あくまで韓国の輸出管理制度や運用の不十分な点があることを踏まえた措置だ」と強調しますが、具体的にどのような問題が韓国側にあったのか、政府はこれまで一度も具体的事実を示していません。

 そもそも、韓国に安全保障輸出管理上の疑義を訴えているのは日本だけです。国際的にもおよそ支持が得られない以上、何の説得力もありません。

稚拙な外交手法

 安倍政権が韓国への輸出規制強化に着手した7月1日に先立つ6月下旬には、G20大阪サミット(首脳会議)が開かれました。本来なら、7月の参院選に向けて外交面での成果をアピールするのが狙いでしたが、領土問題ではロシアのプーチン大統領に一蹴され、トランプ米大統領からは「日米安保条約は不公平だ」と言い放たれるなど、「安倍外交」は総破綻に陥りました。

 朝鮮半島の非核化をめぐる動きにも取り残される中、安倍政権に唯一残された外交カードが、「嫌韓」ムードをあおることでした。

 しかし、こうした強硬策は両国の感情的対立をあおるだけです。外交的手法としては稚拙といわざるをえないばかりか、隣国との不毛な対立をあおることで国内的な支持を獲得しようという動きはきわめて危険なものです。

 経産省は韓国の除外をめぐる意見公募(パブリックコメント)で、約4万件中95%が賛成、1%が反対だったとしており、これを除外決定の根拠の一つにしています。ただ、募集期間が24日間ときわめて短く、周知徹底も不十分でした。賛否があいまいな意見も少なくないとみられ、恣意(しい)的な分類がなされた可能性もあります。

 そうした中、経産省が公表した「代表的意見」には、「政治的な対立と経済を切り離してきた原則が揺らぐ」「今までは大丈夫だったのに、どうして急に規制を持ち出したのか」「反日感情を悪化させ、観光産業や地域経済への影響を懸念する」「選挙対策としか思えない」「日本の国際的な信頼を下げる」など、道理ある意見も数多くみられました。(竹下岳)


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