2019年8月3日(土)
韓国を優遇対象から除外
安倍政権 “禁じ手”の措置強行
政府は2日、安全保障上の輸出管理で優遇措置をとっている優遇対象国(旧「ホワイト国」)から韓国を除外するための政令(輸出貿易管理令)の改定を閣議決定しました。新たな政令は7日に公布され、28日に施行されます。ホワイト国の指定取り消しは初めて。日本は2004年、韓国をアジア唯一の「ホワイト国」に指定していました。
菅義偉官房長官は閣議後の記者会見で、「あくまで輸出管理を適切に実施するための運用の見直し」「アジア各国と同様の扱いに戻すもので、禁輸措置ではない」と説明しますが、一連の経過を見れば元徴用工問題をめぐる韓国への報復措置であることは明らかです。政治的な紛争の解決に貿易問題を使うという禁じ手であり、何ら道理のないものです。
経済産業省によれば、今回の政令改定により、韓国向けの輸出については個別の申請を不要とする一般包括許可が適用できなくなるとともに、大量破壊兵器や通常兵器などに転用されるおそれがある場合は輸出許可申請が必要になります。
政府は7月4日、フッ化水素など半導体材料3品目で輸出規制を強化。今後は軍事転用のおそれがあるとみなされれば、幅広い品目で個別の許可が必要になるため、韓国向け輸出で大混乱が生じる可能性があります。世耕弘成経産相は閣議後の記者会見で、「3品目に限らず、迂回(うかい)輸出や目的外転用には厳正に対処する」と述べました。
韓国は輸出規制強化を不当と批判。旧「ホワイト国」から除外しないよう協議に応じるよう繰り返し求めていましたが、日本側はまともに協議に応じることなく閣議決定に踏み切りました。韓国は経済的損失を確認できれば、世界貿易機関(WTO)に提訴することも検討しています。
経産省は従来、優遇措置を取っている国を「ホワイト国」と呼称していましたが、これを廃止し、AからDの4グループに区分。旧「ホワイト国」を「グループA」に変えます。韓国は今後、「B」指定になります。
文大統領「無謀な決定」
韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、2日に開いた臨時閣議の冒頭、日本が貿易管理上の優遇対象国からの韓国除外を閣議決定したことについて、「無謀な決定だ」として遺憾の意を表明しました。
文氏は、日本の措置は、日本企業に元徴用工らへの賠償を命じた韓国最高裁判決を受けた「明白な貿易報復」と指摘。「相応する措置を断固として取っていく」と警告しました。
韓国政府はその後、対抗措置として、日本を貿易管理上の優遇対象国から外し、輸出管理を強化すると発表しました。
文氏は、日本が、韓国や米国が提案した話し合いに応じなかったことを挙げ、「状況を悪化させてきた責任が日本にあることが明確になった以上、今後起きる事態の責任も全面的に日本政府にある」と主張しました。
さらに、日韓の間には「不幸な歴史による深い傷があり、両国は傷を癒やそうと努力してきた」と強調。「いまになって加害者である日本が傷をえぐるなら、国際社会の良識が決して容認しないだろう」と語りました。