2019年7月17日(水)
主張
参院選と大軍拡
米言いなりの“爆買い”やめよ
安倍晋三政権は昨年末、おおむね10年を念頭に、軍事力の在り方と水準を示す新たな「防衛計画の大綱」と、同大綱に基づき、今後5年間の軍事力整備の具体的な内容や規模、総額を定めた「中期防衛力整備計画」(2019~23年度、中期防)を決定しました。中期防は、過去最大の27兆4700億円もの軍事費を投入する大軍拡計画です。大きな特徴の一つは、トランプ米政権の要求に応え、F35戦闘機など米国製兵器の大量調達=“爆買い”を盛り込んでいることです。米国言いなりの大軍拡の中止は、参院選の重要な争点です。
安倍政権の下で急増
米国製兵器の調達は、多くが米政府からの対外有償軍事援助(FMS)という形で行われています。FMS調達額は安倍政権下で急増し、新大綱・中期防によってさらに拡大されようとしています。
中期防の初年度に当たる19年度のFMS調達額は7013億円(当初予算額)にも達します。第2次安倍政権発足直後の13年度の1117億円(実績額)に比べ、6倍以上に膨れ上がっています。
日本共産党の井上哲士参院議員に防衛省が提出した資料によると、この結果、兵器などの調達(中央調達)の契約額は15年度以降、米政府が、国内軍事企業最大手の三菱重工や川崎重工を抜きトップとなっています。18年度は米政府が契約額4000億円に対し、2位の三菱重工は1949億円です。
さらに、防衛省が日本共産党の赤嶺政賢衆院議員に提出した資料によると、19年度のFMS調達額の内訳で最も多いのは、早期警戒機E2D(9機、約1940億円)で、次いで陸上配備型ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」(2基、約1382億円)、F35A戦闘機(6機、約730億円)となっています。
これらの米国製最新兵器は、トランプ米大統領が安倍首相に再三にわたり購入を迫ってきました。
「イージス・アショア」は、米国以外の国が独自に配備するのは日本が初めてとなります。配備候補地の陸上自衛隊新屋演習場(秋田市)とむつみ演習場(山口県萩市)は、北朝鮮からハワイ、グアムに向かう弾道ミサイルの軌道直下に位置することが明らかになっています。総費用は6000億円を超えるとされ、米国を守るミサイル防衛網の強化を日本が巨額の財政負担で肩代わりするものに他なりません。
F35戦闘機は、安倍政権が昨年末に105機の追加調達を決め、総取得数を147機にしました。実現すれば、米国の同盟国の中で最大のF35保有国になります。うち42機は短距離離陸・垂直離着陸が可能なF35Bにし、「いずも」型護衛艦を改修した自衛隊初の攻撃型空母に搭載する計画です。
今年4月、航空自衛隊に配備されたF35Aが墜落しました。機体の安全性について数多くの欠陥が指摘されているのに、安倍政権は取得方針を見直そうとしません。
暮らしに予算を回せ
防衛省は、中期防でのF35A1機の価格を約116億円としています。それだけの国費で、4000人分の保育所や900人分の特別養護老人ホームの建設が可能です。地域の軍事緊張を高める米国製兵器の“爆買い”をやめ、暮らしの予算に回すため、参院選での政治の転換が必要です。