2019年7月15日(月)
企業主導型保育はいま
安倍政権が推進
安倍政権が待機児童解消対策の柱として推進している企業主導型保育。突然の休園や国の補助金の不正受給、低い定員充足率など、問題が噴出しています。実態をみました。(染矢ゆう子)
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入園強要 資格・研修なし保育
突然の休園 国の補助金不正受給も
東京都23区内の企業主導型保育施設でパート勤務を始めたばかりの田中友里さん(21、仮名)。1歳と2歳の兄弟の母親です。
店併設の施設で
認可保育所に申し込もうと区役所に行きましたが、“求職中”というと「フルタイムで働いてないと」と門前払いに。車で1時間のところに住む実母と話し合い、週2日は実母に預かってもらうことにしました。
6月上旬、ショッピングセンター内で遊び場を運営する施設に、パートの面接へ。「企業主導型保育施設A園を併設しているから」と、店長から入園を勧められます。保育料は子ども2人で約11万円のところ、社員割引で約6万円になるといわれました。「パートの人は全員ここに預けて働いている」。店長の言葉に断り切れませんでした。
すると、1週間後までに6月分の日割りの保育料と、6月末までに7月分の保育料で計7万5000円の入金が必要だと。「とても払えない。今後も月のパート代6万7000円のうち6万円が保育料に消える」。その日のうちに電話で入園を断りました。
保育内容に不安
翌日、店長から「保育園の園長先生が残念がっている。やはり入園できないか」と電話が。断ることができず、次男だけ給与が出た後から預けることにしました。
次男をA園に預け、長男を実母に預けるとガソリン代等で月5万円弱かかります。「下の子を預ける必要はないのに。認可保育園に転園したいけれど、言い出しにくい」と田中さん。
保育内容にも不安が。田中さんの面接中、夫はA園の散歩先の公園にいました。保育士が園児の手を強く引っ張り、園児が転んでも放置していたと聞きました。
田中さん自身、保育士資格や制度上必要な研修すらないまま、A園の一時預かりを担当しています。時給は最低賃金プラス50円で休憩なし。一時預かり事業のパンフレットには「保育士の資格をもったスタッフが…終始見守っております」と記されています。
認可並みの補助
安倍政権は、2020年度末までに32万人の「保育の受け皿」を整備する計画。うち6万人分は企業主導型です。
企業主導型は、市町村が設置・審査に関与せず、保育士資格者は認可保育所の半分でよいなど、認可基準以下で運営可能にもかかわらず認可保育所並みの補助が国から出ます。
国会審議で、内閣府は、設置審査や指導監査を児童育成協会に丸投げしてきたことが明らかになりました。助成決定を行う同協会の審査で、現地確認は約2600施設のうちわずか6件。審査はたった5人で年3回の会議で行うというずさんな実態です。
しかも、実際に監査業務を行っているのは、児童育成協会から監査業務の大部分を委託された人材派遣大手のパソナです。内閣府は、同社の子会社パソナフォスターがコンサルタントを務めている企業主導型施設がどれだけあるのかすら把握していません。
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公的保育 掘り崩す
日本共産党衆院議員 塩川鉄也さん
企業主導型保育事業は、自治体の保育実施義務に支えられた認可保育所による公的保育制度をほりくずす制度です。衆院内閣委員会の質疑でも、内閣府は、企業主導型は仕組み上「認可施設にならない施設」だと認めました。
にもかかわらず、政府は企業主導型保育を待機児童の受け皿として位置づけ、急拡大させてきました。一方で、公立保育所数は、地方行革の押し付け、運営費・整備費の一般財源化によって、この20年間で3割も減少しています。
企業主導型はもうやめて、「安心・安全な保育」を求める保護者の声に応えて、公立保育所を中心に認可保育所の拡大で待機児童の解消を図るべきです。