2019年7月11日(木)
世界の真ん中で「米国忖度」外交
気候対策 安倍首相に市民社会から批判
安倍晋三首相が参院選に向けて売り込んでいるのは、外交分野の成果です。自民党の「参議院選挙公約」を開くと、首脳会議の場で各国首脳の「真ん中」に立つ安倍首相の写真が現れます。添えられているのは、「世界の真ん中で力強い日本外交」「地球規模の課題解決に向け、世界をリードします」という見出しです。しかし、市民社会から聞こえてくる安倍外交への評価は正反対です。(杉本恒如)
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最初から妥協
「安倍総理、気候危機解決へのリーダーシップ果たせず」
20カ国・地域(G20)が大阪市で開いた首脳会議(サミット)で首脳宣言が採択された6月29日。気候ネットワークの浅岡美恵代表は安倍首相の姿勢を批判する談話を発表しました。
「安倍総理は、日本初のG20サミット議長国として、気候危機の解決に向けたリーダーシップを発揮すると強調していた。ところが、実際は、米トランプ政権に配慮し、内容を骨抜きにして全体合意を図ろうと最初から妥協の姿勢で臨んだ」
トランプ米大統領に「直談判」して迎合したときの様子を、安倍首相は自らの口で語っています。参院選が公示された7月4日、「第一声」の演説で次のように述べました。
「(G20の)リーダーはみんな自分の国を背負っているし、たいへんタフな人々だ。まとめるのはそう簡単ではない」「環境については本当に最後の最後までもめたが、会議の現場で私は議長の役を麻生(財務相)さんにちょっと代わってもらってトランプ大統領のところにいって直談判をした。そこでトランプさんに『これだったらいいですよ』という案を示してもらい、メルケル(独)首相やマクロン(仏)大統領とも話して最終的にG20の首脳宣言を発出することができた」
トランプ大統領が示した文案をそっくりそのまま盛り込んだというのです。首脳宣言の文言から、こうした妥協の中身を容易に読み取ることができます。
「むしろ後退」
G20大阪首脳宣言において、米国を除く19カ国・地域は温室効果ガス排出削減のためのパリ協定を完全に履行すると約束しました。他方、米国はパリ協定から離脱する立場を改めて明確にしました。そのうえ「環境に対する米国のバランスのとれたアプローチ」を前回首脳宣言(18年)の4倍の行数を費やして説明し、「米国は、排出量の削減において世界の指導者である」とまで書きました。
G20首脳らの「真ん中」で対米追従ぶりをあらわにした安倍首相。気候変動対策を前へ進めなかったG20大阪首脳宣言。両者への市民社会の評価は惨たんたるものです。
「議長国・日本はトランプ大統領に忖度(そんたく)して消極姿勢だった。気候変動の緊急性に対応する前向きなメッセージに乏しく、世界の温室効果ガスの80%を排出するG20の責任に見合わない」(6月29日、サミット会場で会見したC20〈市民社会の組織〉メンバー)
「気候変動問題も主要議題の一つでしたが、残念ながら前進はなく、むしろ後退したと言っても過言ではありません」(7月1日、FoEジャパン気候変動担当・深草亜悠美さん)
「気候変動対策の強化に消極的であった日本の姿勢は、気候変動課題を重視し、脱石炭に歩み始めている各国政府のみならず、顕在化する気候危機に苦しむ世界の市民にとっても裏切りというほかない」(気候ネット・浅岡さん)