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2019年7月4日(木)

ILOハラスメント禁止条約

人間の尊厳守る宣言文

全労連副議長 長尾ゆりさんに聞く

 国際労働機関(ILO)は6月21日、創立100周年の記念すべき総会で職場でのハラスメントを禁止する「仕事の世界における暴力とハラスメントの除去に関する条約」と「同勧告」を採択しました。長尾ゆり全労連副議長に条約の意義や今後の課題について聞きました。(玉田文子)


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(写真)長尾ゆりさん

 この条約は、「労働者の人間としての尊厳を守れ」という権利宣言のような文書です。すべての人に「暴力とハラスメントのない仕事の世界の権利がある」と明記したことは、大きな意味があります。

禁止規定求める

 前文では、「ハラスメントは人権侵害で、機会均等に対する脅威であり容認できない。ディーセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事)と相いれない」と確認し、暴力とハラスメントを「身体的、精神的、性的、経済的危害を引き起こす容認できない行為と慣行、その脅威」などと定義しています。

 この条約は、契約上の地位にかかわらず働く人すべて、研修生やボランティア、就職活動中の人なども幅広く対象としています。さらに、第三者(顧客・サービス提供者・患者など)からのハラスメントを防止・除去する総合的な措置を、国に求めています。

 具体的には、ハラスメントを禁止する法制や、必要な制裁措置、被害者救済と支援措置を義務付けています。雇用における差別をなくし、ディーセントな労働の促進を求めています。

 勧告では、ハラスメントの可能性を拡大する要因として、「労働条件、就労形態、人的管理」や「差別、ジェンダー、暴力とハラスメントを助長する文化的・社会的規範」などに、「(国は)とりわけ注意すべき」としています。

 全労連は「ハラスメントの温床である長時間労働・人員不足や競争主義の解消」を求めて運動してきましたが、条約は私たちの運動に重なるものです。また、「女性蔑視・弱い者いじめの社会を変えたい」という女性の要求を励ますものです。

批准・法改正へ

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(写真)ILO総会で「労働の世界における暴力とハラスメントを除去する条約」の文案を審議し、政労使三者の合意ができたことを喜び、記念撮影をする基準制定委員会の委員ら=6月20日、ジュネーブの国連欧州本部(伊藤寿庸撮影)

 総会では、この条約に日本の使用者代表は棄権し、世界の流れに取り残された少数派であることを示しました。

 しかし、労働者代表と政府代表は賛成しました。セクハラ・性暴力の被害を告発する「#MeToo」運動の世界的な広がりや、ハラスメント根絶を求める国内の運動や世論の高まりを、日本政府も無視できなかったのです。

 今後、条約の批准とともに、国内法令の改正が求められます。先の国会でパワハラ防止措置を企業に義務付ける法改定が行われましたが、禁止規定は盛り込まれませんでした。

 禁止規定のない不十分な法制度が、ハラスメント被害者への攻撃や二次被害を生む要因となっています。

 条約と国会の付帯決議に基づき、禁止規定や被害者救済の検討を今すぐ開始し、条約の早期批准と法改正に踏み出すことが求められます。

 国会に、私たちの声を届ける議員を送り出しましょう。参議院議員選挙はチャンスです。


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