2019年6月22日(土)
“歴史に残る条約だ”
暴力とハラスメント禁止へ前進
ILO総会 拍手と歓声響く
【ジュネーブ=伊藤寿庸】国際労働機関(ILO)年次総会の最終日となった21日、労働の世界における暴力とハラスメントを禁止する条約と勧告が採択された瞬間、議場は総立ちとなり、拍手と歓声が鳴り響きました。
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労使それぞれの代表と、各国政府代表が、文案をめぐって激しい論議を繰り広げてきた委員会では前日の20日、最終的に条文で合意。全員が拍手で喜び合いました。労働者側の席に座っていた多くの女性たちは踊りだし、歌も飛び出しました。
ブルガリア運輸労連の議長のエカテリーナ・ヨルダノバさんは、「ここまで長い道のりを、国内でも地域でも世界でも一緒に団結して取り組んできた。単なる条約にとどまらない大きな成果だ。ミラクルだ」と、上ずりがちな声で語りました。
委員会での採択後の意見表明で、労働者代表は「数百万人、特に女性の生活を大きく変える条約」だと指摘。使用者代表も「暴力とハラスメントのない働く場を実現する政策と世界的行動の基盤を据えた」と評価しました。
政府代表からは、「『#MeToo』運動も貢献した。条約は、この運動への拘束力ある力強い応答だ」(欧州連合〈EU〉代表のフランス)、「広く批准され、発効し、普遍的に適用されることを望む」(北アフリカのアルジェリア)、「歴史に残る条約だ。この輝かしい光が、労働の世界での暴力とハラスメントを終わらせる第一歩となってほしい」(カリブ海の国トリニダード・トバゴ)と支持、称賛の声が多く出ました。
アフリカや中東など一部諸国の反対で、LGBT(性的少数者)や移民などを列挙した、暴力とハラスメントの影響を受けやすい「弱者」グループのリストが、「勧告」から削られたことには、使用者代表さえ「懸念」を表明。すべての弱者を守る条約の趣旨は変わらないことを確認したうえで、賛意を表明する国もありました。