2019年6月22日(土)
主張
出生数の連続減少
子育てに希望もてる社会こそ
日本の少子化に歯止めがかかりません。2018年の合計特殊出生率(女性1人が生涯に産む子ども数の推計)は、17年より0・01ポイント下がり1・42でした。出生数も91万8397人と過去最少を更新しました。子どもを持ちたいと望んでも二の足を踏んだり、あきらめたりする現状が変わっていないことはあまりに深刻です。安倍晋三政権は、「少子高齢化は国難」と述べ対策を打ち出していますが、消費税増税と引き換えにするなど国民の願いに応えていません。子育て世代が、出産・育児に希望を持てる本物の改革を実現する政治に転換することが必要です。
お金がかかりすぎる日本
厚生労働省が7日発表した人口動態統計は、少子化と人口減少が進行する日本の現実を改めて示しました。合計特殊出生率の低下は、3年連続です。死亡数は136万2482人と戦後最多となり、出生数から死亡数を引いた自然減は44万4000人余と初めて40万人を超え、過去最大となりました。安倍政権は「希望出生率1・8の実現」を掲げてきたものの、逆の状況がすすんでいます。
日本の合計特殊出生率の低さは、フランスの1・90、スウェーデンの1・78、イギリスの1・76などと比べても歴然としています。もちろん子どもを産むか産まないかは、個人の自由な選択です。しかし、子どもを持ちたいと願っても、その希望を妨げているさまざまな“壁”が存在し、それを打開できていないことに問題があります。
内閣府調査(15年)では、夫婦が理想とする子どもの数は2人以上です。一方、予定する子ども数が理想人数を下回っている夫婦に理由を聞いたところ、最も多い答えは「子育てや教育にお金がかかりすぎる」(56・3%)でした。「お金がかかる」という答えはフランスで27・8%、イギリスで26・1%にとどまります。日本では経済的負担が重くのしかかり、出産・子育ての障害になっている事実を浮き彫りにしています。お金の心配がなく子育てできる社会にすることは差し迫った課題です。
日本の労働実態も問われています。政府が18日発表した「少子化社会対策白書」は「子育て世代の男性の長時間労働」を取り上げ、就業時間が週49時間以上の男性労働者の割合が日本では28・6%にのぼり、フランス14・6%、イギリス17・5%と比べ高水準にあることを問題にしています。若者の低賃金などが結婚・子育てを困難にしていることは他の政府資料などでも明らかです。賃上げと労働時間短縮を柱にした「8時間働けばふつうにくらせる社会」の実現は、少子化に歯止めをかける上でも大きな土台を築くものです。
政治を転換するとき
「自国が子どもを産み育てやすい国か」という子育て世代への意識調査では、日本では「そう思わない」が50%以上を占めたのに対し、フランスやイギリスは20%台でした(前出の内閣府調査)。子育て支援策の立ち遅れをこれ以上放置することはできません。
子育て家庭の暮らしを直撃する消費税に頼らず、大企業・富裕層の優遇税制の是正などで家計を応援する政策の財源を確保すべきです。目前に迫った参院選は、子育て世代をはじめ国民の声が届く政治に切り替える重要な機会です。