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2019年6月19日(水)

主張

日本の温暖化対策

「世界をリード」には程遠い

 長野県軽井沢町で15、16の両日開かれた20カ国・地域(G20)エネルギー・環境関係閣僚会合は、プラスチックごみ削減の枠組みづくりなどを盛り込んだ共同声明を採択しました。しかし、地球温暖化防止の国際的枠組みである「パリ協定」の目標達成に向けた具体的方向性は示されませんでした。今回G20の議長役の安倍晋三政権が、パリ協定離脱を表明しているトランプ米政権の孤立回避を優先させたためと報じられており、日本の温暖化対策への姿勢があらためて問われます。

米国に配慮し腰引ける

 日本政府が示した閣僚会合共同声明の初案には「パリ協定」という言葉さえなかったため、欧州連合(EU)がパリ協定に言及することを主張し、パリ協定の参加国が同協定実施への「コミットメントの再確認に留意する」との文言がようやく入ったといわれます。温室効果ガスの削減に積極的なEUは、昨年12月にアルゼンチンで開かれたG20宣言から後退させてはならないとの立場とされます。トランプ政権に“配慮”して腰の引けた対応しかできない日本政府との違いが示された形です。

 パリ協定は産業革命前からの平均気温上昇を2度未満とし、1・5度に抑える努力をする目標を掲げました。そのためには、温室効果ガスの排出を2050年ごろまでに「実質ゼロ」にする必要があると、昨年、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の「1・5度特別報告書」は明示しました。報告書を踏まえ、パリ協定の実効性を高めることは焦眉の課題です。

 EUは、1990年を基準年にして、温室効果ガスを2050年までに80~95%を削減する、そのため30年までに40%削減するという目標を設定したのもその強い自覚があるからです。政府が後ろ向きの米国でも、多くの州政府は積極的な再生可能エネルギー拡大政策を展開しています。

 この世界の流れとの落差が大きいのが、日本です。安倍政権が閣僚会合直前に閣議決定(11日)した温暖化対策の「長期戦略」は、世界の水準から大きく立ち遅れた内容です。16年に決めた、50年までに温室効果ガスを80%削減するという目標を変えませんでした。30年の削減目標は13年比でわずか26%です。主要国で最低レベルであり、引き上げようという姿勢が見られません。

 石炭火力発電については、脱却の方向を示していません。石炭火力「全廃」の言葉が、経団連など財界の圧力でなくなったと指摘され、大きな問題になっています。石炭火力発電は25基もの新増設計画があります。長期戦略はこの動きにもお墨付きを与えるものです。

原発ゼロ、再エネ拡大こそ

 国民の多くが反対している原発再稼働についても、長期戦略は「国も前面に立ち」推進する立場を鮮明にしています。「原子力の利用を安定的に進めていく」とも記しています。再稼働を進める九州電力が太陽光発電の「出力制御」をくり返しているように、原発は再エネ拡大の妨げになっています。原発固執はやめるべきです。

 このような長期戦略ではとても世界の温暖化対策を「リードする」(首相)ことはできません。長期戦略は撤回し、「原発ゼロ」、再生エネの抜本的拡大への大転換こそ求められます。


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