2019年5月31日(金)
主張
木更津「暫定配備」
オスプレイどこにもいらない
防衛省が陸上自衛隊の垂直離着陸輸送機オスプレイを2019年度末から千葉県の陸自木更津駐屯地に「暫定配備」する意向を地元・木更津市に示しました。同省がオスプレイの「恒久配備先」として「最適」とする佐賀空港での駐屯地建設が、地元漁協や住民の反対でめどが立たないからです。沖縄県の普天間基地などに配備されている米軍オスプレイは、墜落や部品落下、不時着など深刻な事故・トラブルを相次いで起こしています。騒音を増加させ、事故の危険を高めるオスプレイの配備はいかなる場所であれ許されません。
関東の空飛び回る事態に
安倍晋三政権は13年12月、米国製のオスプレイ17機を陸自に導入することを決めました。これまで5機が引き渡されていますが、日本国内での配備先が定まらないため米国に留め置き、自衛隊員が現地で操縦や整備などの訓練を行っています。
防衛省は木更津駐屯地にこの5機にとどまらず、21年度末までに納入が完了する見込みの17機全機を配備する考えです。「佐賀(空港)においては(オスプレイの)恒久的な施設を造らせてもらうので、かなり時間もかかる」(岩屋毅防衛相)というのが理由です。「暫定」と言うものの、同省が配備の長期化を想定しているのは明白です。
木更津駐屯地には現在、陸自第1ヘリコプター団に所属する大型輸送ヘリなど約70機が配備されています。同駐屯地で17年から定期整備が始まった普天間基地の米軍オスプレイも、しばしば飛来しています。
防衛省の説明によると、木更津駐屯地での離着陸回数は現在、年約2万5000回に達します。陸自オスプレイが配備されることになれば、17機全てがそろう21年度末以降は年約4500回増え、3万回近くに上ります。
陸自オスプレイの訓練範囲は、木更津駐屯地周辺にとどまりません。防衛省は想定される訓練場所として、習志野(千葉県)、富士(山梨県、静岡県)、相馬原(群馬県)などの演習場を挙げています。
しかも、東京都の米軍横田基地には特殊作戦用のオスプレイが5機配備されており、埼玉県や神奈川県でも飛行が目撃されています。同基地では、さらに5機の追加配備も計画されています。
日米合わせて多数のオスプレイが関東の空を飛び交う事態が生まれることになります。
防衛省は18年3月、南西諸島の防衛を理由に、海外への「殴り込み部隊」である米海兵隊をモデルにした上陸作戦部隊・「水陸機動団」を長崎県の陸自相浦駐屯地で発足させました。陸自オスプレイの主な任務は「水陸機動団を迅速に島しょに輸送する」(同省)こととされています。
成り立たぬ防衛省の説明
防衛省が陸自オスプレイの「恒久配備先」として佐賀空港を「最適」としているのは、水陸機動団が駐留する相浦駐屯地に近いためです。しかし、木更津駐屯地とではあまりに距離が離れています。
防衛省は、木更津駐屯地を選んだ理由として「要員の練度や即応態勢を維持するため」と説明しますが、水陸機動団との日常的な訓練は困難です。同省の説明に照らしても「暫定配備」に道理がないのは明らかであり、計画は撤回すべきです。