2019年5月23日(木)
主張
プラごみ規制強化
排出削減に真剣に取り組む時
有害廃棄物の国境を越えた移動を規制するバーゼル条約が改定され、汚れたプラスチックごみが規制対象に加えられます。スイスで開かれた締約国会議(10日)で決められました。東南アジアなどの途上国に輸出された大量のプラごみがきちんと処理されず、海洋汚染を引き起こしていることが改定の背景にあります。発効は2021年で、国内処理が原則となり、相手国の同意のない輸出は禁止されます。多くのプラごみの処理を輸出に委ねてきた日本は、従来の対策を大本から見直すことが求められます。
海洋汚染の深刻化の中で
世界では年間3億8千万トンのプラスチックが生産され、その半分が一回限りの使い捨てとされています。毎年800万トンが陸から海へと流れ込んでいます。このままでは、50年までに海のプラごみが魚の総重量を超えるといわれています。
海洋生物がポリ袋やプラストローを飲み込み、衰弱し死に至るケースも出ています。海水中の有害物が付着したプラごみを飲み込んだ海鳥が毒される例もあります。5ミリ以下のマイクロプラスチックは魚や貝からも見つかっています。
生態系に与える影響は深刻化しており、海洋プラごみをはじめプラごみ対策は、地球の将来がかかった大問題です。
日本は、1人当たりの使い捨てプラスチックの廃棄量が米国に次いで2番目に多い国ですが、対策は立ち遅れています。日本は年間900万トンのプラごみを排出し、約100万トンが東南アジアに輸出されています。
中国が17年末に輸入を禁止したため、日本国内の処理が追いつかず、プラごみが保管場所に山積みになったり、不法投棄されたりするケースが相次いでいます。とくにプラごみの8割近くを占める産業廃棄物には対応しきれていない状態です。
今回の輸出規制について、迅速で有効な対策を取らなければ深刻な事態に拍車がかかります。
安倍晋三政権はいま「プラスチック資源循環戦略」を策定中です。6月に大阪で開かれるG20(20カ国・地域首脳会議)までに正式決定するとし、30年までに使い捨てプラの排出を25%抑制することなどを打ち出しています。
しかし、実現の道筋は具体策に欠けています。
たとえば、リサイクルの主力に「熱回収」をすえています。プラごみを焼却して、その熱を利用するというものです。現在も半分以上が熱回収です。この処理は「最終手段」だと政府自身もいっていますが、最終手段の「熱回収」に依存せざるを得ない方策では限界があります。
海へのプラごみ流出についても、日本の現行制度の、どこに欠陥があるのか、徹底した調査と検証を行い、本腰を入れた対策を急ぐべきです。
不必要な生産をさせない
世界では、使い捨てプラスチック製品の製造・販売・流通の禁止に踏み込む流れが広がっています。プラ製造企業の自主的努力に任せるのではなく、不必要なプラ製品を生産しないような発生元での削減対策に取り組むべきです。プラ製品の大量製造、大量消費という経済・社会のあり方も問われます。