2019年5月18日(土)
大阪・維新カジノ 矛盾
利権争い激烈
根強い反対論
統合型リゾート産業展
維新勢力がカジノ誘致の動きを加速させている大阪市で15、16の両日、民間団体による大規模な統合型リゾート産業展が開かれました。大阪進出を狙う海外カジノ企業間のし烈なライバル争いが表面化する一方、ギャンブル依存症問題や、今も根強いカジノ反対世論など推進勢力が抱える大きな矛盾が浮かび上がりました。(竹腰将弘)
|
6月のG20サミットの会場にもなる同市住之江区の国際会議場。米ラスベガス・サンズ社など海外カジノ企業7社が協力し、大阪府・市、関西経済連合会など関西財界3団体が後援。三井住友銀行など金融機関、大成建設などゼネコン、警備会社や電機メーカーなど大阪カジノにぶら下がることで利益を得ようと狙う国内企業多数も出展しました。
海外7社幹部が
催しのクライマックスは、海外カジノ企業7社の経営幹部がそれぞれ25分間を割り当てられ、自社のプレゼンテーション(宣伝)をしたセミナーでの講演でした。
ギャラクシーエンターテインメント社のテッド・チャン最高執行責任者は「統一地方選挙を受けて大阪がIR(カジノを中核とする統合型リゾート)プロセスを始めたことに興奮している」とのべ、大阪府知事・市長選などの結果で維新勢力によるカジノ誘致がいよいよ本格化していることを手放しで歓迎しました。
彼らは一様に、有名歌手の公演やスポーツの大試合、アートやイベントの夢のようなエンターテインメント施設としてのIRのイメージを語りました。物品の仕入れや仕事の外注で地元中小企業に利益を分配し、地方経済の活性化に貢献するというメッセージも強く打ち出しました。
7社はいずれもラスベガス、マカオ、シンガポールなどにIRを展開する巨大カジノ企業です。大阪進出のために他社を蹴落としたいという狙いは露骨です。ラスベガス・サンズ社のマネージング・ダイレクターであるジョージ・タナシェビッチ氏は「どの社も自分たちが一番だというが、サンズが日本に最もフィットしている」と述べました。大阪カジノ利権をめぐるカジノ企業間のし烈な競争が起きています。
運動にいらだち
テッド・チャン氏は同社が独自に行った大阪の世論調査で、IR賛成41%、反対17%だったという数字をあげ、「事業には地域社会の理解が不可欠でさらに理解を得る努力が必要だ」と述べました。
MGMリゾーツ社も自社の調査で、IRに「行きたい」という人の比率が昨年7月の50%から今年2月には61%になったという数字をあげ「大阪ではIRへの理解が広がっている」と強弁しました。
しかし、府民、市民の間のカジノ反対の声は根強く、新しい市民の反対運動も広がっています。ウィン・リゾーツ社のクリス・ゴードン代表はそれを意識して「IRとは何かを理解していない人が多い。カジノだと思っている」といらだたしげに述べました。
大阪府・市が2月に策定した基本計画で、大阪のIRの年間の収益4800億円のうち実に8割、3800億円はカジノの収益だとしています。これを、カジノでない、という方が異常です。
アリバイ的催し
産業展と並行して、会場ではギャンブル依存症問題のシンポジウムも行われました。「責任あるゲーミング」という表題が示す通り「節度のある賭博であればカジノの害毒は最小化できる」という結論に沿ったアリバイ的な催しです。
初日のシンポジウムに登場した大阪市立大学大学院の井上幸紀教授は、精神科医の立場からとして「ギャンブル依存症のことを考えればカジノなどない方がいいという意見もあると思う」と発言しました。
ギャンブル依存症対策の推進をいいながら、最も危険な賭博場であるカジノを新たにつくることの矛盾が覆い隠しようもなくなっています。
■大阪カジノ産業展に出展した海外7社
●米国
ラスベガス・サンズ
MGMリゾーツ
ウィン・リゾーツ
シーザーズ・エンターテインメント
●マカオ
ギャラクシーエンターテインメント
メルコリゾーツ&エンターテインメント
●シンガポール
ゲンティン・シンガポール