2019年5月15日(水)
主張
菅長官訪米と沖縄
民意を顧みず米国に忠誠とは
菅義偉官房長官が先週、米国を訪問しました。自民党内で「ポスト安倍」との声も出る中での事実上の「外交デビュー」と言われ、ペンス副大統領らトランプ政権の主要メンバーと会談しました。「沖縄基地負担軽減担当相」でもある菅氏が一連の会談で確認したのは、沖縄県名護市辺野古の米軍新基地建設の推進です。辺野古新基地に反対する沖縄の民意を一顧だにしない姿勢はあまりに異常です。
「辺野古唯一」執ように
菅氏が会談したのは、政権ナンバー2のペンス氏をはじめ、ポンペオ国務長官、近く国防長官に昇格するシャナハン同長官代行です。「沖縄基地負担軽減相」とともに兼務する「拉致問題担当相」としての訪米が主な目的でしたが、政府の危機管理を担う官房長官の外国訪問は異例です。「これを本格的な外交デビューにするため、日本の外務省や在米日本大使館が繰り返し、米政府に要人との会談希望を伝え、お膳立てした」(「朝日」12日付)とされています。
外務省の発表によると、菅氏はポンペオ氏やシャナハン氏との会談で「普天間飛行場の辺野古移設を含め在日米軍再編や負担軽減策を着実に実施していくことを確認」しました。ペンス氏との会談でも「在日米軍再編等に関わる日本政府の取り組みについて述べ、引き続き連携していくことを確認」しました。
沖縄では、昨年9月の県知事選で、辺野古新基地建設の阻止を掲げる「オール沖縄」の玉城デニー現知事が圧勝し、今年2月の県民投票では辺野古埋め立て反対の票が7割を超えました。これに対し日米両政府は、ポンペオ、シャナハン両氏も出席した4月の安全保障協議委員会(2プラス2)で、辺野古新基地建設を「唯一の解決策」だとし、「同計画を可能な限り早期に完了するとの強い決意」(共同発表)を表明しました。
しかし、この2プラス2直後に投開票された衆院沖縄3区補選では、「オール沖縄」の屋良朝博氏が、辺野古埋め立て推進を公然と掲げた自民党候補を破って当選し、「新基地ノー」の決定的な審判を下しました。菅氏はこの結果も無視し、辺野古新基地建設を「唯一」とする方針の実行をトランプ政権に重ねて約束したことになります。
「安倍政権が強調する『沖縄に寄り添う』姿勢よりも、米側に忠誠を尽くすありようが鮮明」(琉球新報11日付)だという批判が、沖縄から上がるのは当然です。
安倍政権が固執し続ける辺野古新基地建設に展望はありません。
埋め立て予定海域に軟弱地盤が広がっているという深刻な問題を抱えているためです。「計画を可能な限り早期に完了する」と言うものの、政府は地盤改良を含め新基地建設全体の期間や費用さえ示すことができません。
しかも、地盤改良のための設計変更にはデニー知事の承認が必要ですが、知事は辺野古埋め立て反対の民意に応えると明言しています。政治的にも、技術的にも辺野古新基地計画の破綻は明瞭です。
新基地問題解決の道は
辺野古新基地断念、普天間基地閉鎖・撤去を実現するためにも本土と沖縄の連帯、市民と野党の共闘で安倍政権を倒すことが必要です。きょう15日は沖縄の日本復帰から47年です。日本の主権と民主主義が根本から問われています。