2019年5月13日(月)
「日本政策研究センター」 改憲ビラで本音
9条に自衛隊明記で「普通の安全保障」
自衛隊明記による9条2項の「空文化」をいち早く提唱して、安倍晋三首相の提案にも影響を与えた「日本政策研究センター」が「自衛隊の存在を憲法に明記する憲法改正を提案します」とのビラを発行し、その中で、自衛隊の憲法明記によって「普通の安全保障や防衛論議ができるようになる」と主張しています。
「普通の安全保障や防衛論議」とは、海外派兵禁止や集団的自衛権行使の禁止などの制約を受けない軍事論のことです。自衛隊明記論の本質を正直に示すものです。
ビラは、自衛隊の憲法明記によって「自衛隊の法的地位が確実なものとなります。その結果、自衛隊は憲法違反だという主張は消えていく」と主張。「自衛隊が憲法に明記されれば、この日本を守る自衛隊は国の制度を守るうえでもきちんと位置付けられる」「自衛隊が任務とする『我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つ』ことが大切な価値あるものとして、制度や政策のうえでも正当に位置付けられる」として、自衛隊の憲法明記が国の構造を大きく変えることを認めています。
そのうえで「自衛隊の存在が憲法に明記され、国の制度の中核に位置づけられれば…世界の国々において論じられている、普通の安全保障や防衛論議ができるようになる」としています。
解説
9条2項「空文化」論の元祖
「日本政策研究センター」代表の伊藤哲夫氏は日本会議・政策委員で、安倍首相のブレーンの一人といわれてきた人物です。
伊藤氏は、同センターの機関誌『明日への選択』(2016年9月号)で、「憲法九条に三項を加え、『但(ただ)し前項の規定は確立された国際法に基づく自衛のための実力の保持を否定するものではない』といった規定をいれること」を提案していました。
同センター研究部長の小坂実氏も、「九条二項は、今や国家国民の生存を妨げる障害物と化したと言っても過言ではない。速やかに九条二項を削除するか、あるいは自衛隊を明記した第三項を加えて二項を空文化させるべきである」(『明日への選択』16年11月号)と主張していました。
日本会議と一心同体の日本会議国会議員懇談会は17年度の「運動方針」(17年3月15日決定)で、9条改憲に関連し「憲法上に明文の規定を持たない『自衛隊』の存在を、国際法に基づく自衛権を行使する組織として、憲法に位置づける」と明記しました。伊藤氏らの提案とそっくりの内容です。
これを受けて安倍晋三首相は、17年5月3日の日本会議系改憲集会に送ったビデオメッセージで、9条1、2項を残して自衛隊を憲法に明記するという9条改憲案を示しました。
日本政策研究センターが発行するビラは、まさに“元祖”として、自衛隊明記の改憲の本質的狙いを明確にしたものです。(中祖寅一)