2019年4月17日(水)
アルゼンチン 科学技術予算削減
学者ら政権に抗議 “緊縮転換急げ”
南米アルゼンチンのマクリ政権が緊縮政策で科学技術予算を削減していることに対し、学者や研究者らが抗議行動を続けています。学者らは研究機関での採用増や奨学金の充実を要求。予算削減によって科学技術の研究が遅れることは個人の問題にとどまらず、「国家の発展にとって打撃になる」と訴えています。(島田峰隆)
アルゼンチンのメディアによると、大学や研究機関での研究活動を統括する国立科学技術研究会議(CONICET)はこのほど、予算不足のため2000人以上の研究者の雇用を中止しました。奨学金はインフレが進む中で実質的な額が減り続け、研究者の購買力は低下しています。
13、14の両日にはコルドバで、CONICETで働く正副局長ら140人が会議を開き、声明を発表。「研究機関に責任を負う者として、科学技術の後退は国家に破滅的な結果を及ぼすと告発する義務を感じている」「科学技術の発展は生産力、文化の進歩、国民の幸福増進の主要な力だ」と強調しました。
声明は、CONICET予算の緊急増額、就職できなかった若手研究者の奨学金返済期限の延期などを求めました。
10日には首都ブエノスアイレス、ラプラタ、コルドバ、ロサリオなど全国の主要都市で、学者や研究者が一斉にデモ行進や集会に取り組みました。この日は、アルゼンチンの生理学者で1947年にノーベル生理学・医学賞を受賞したバーナード・ウッセイの誕生日で、記念行事の一環として行われました。
ブエノスアイレス大学のアルベルト・コーンブリット教授は、集会で、より良い研究環境を求めて研究者が海外に流出することに懸念を表明。「集会の目的は、科学技術分野での政府の緊縮政策を撤回させることだ。選挙まで待ってはいられない。研究者が海外に出て行ってしまう前に、可能な限り早く緊縮政策を変える必要がある」と強調しました。
マクリ政権の緊縮政策 アルゼンチンのマクリ政権は、2015年の発足直後から財政赤字削減を口実に公務員減らしや公共料金の値上げなどを開始。昨年はインフレ率が50%近くに達し、通貨ペソが50%暴落するなか、国際通貨基金(IMF)から約570億ドル(約6兆3800億円)規模の支援策を受け入れ、引き換えにいっそう厳しい緊縮政策を進めています。