2019年4月7日(日)
トラック労働者条件改善へ
欧州議会 過重労働制限案を可決
低価格売りの東欧から不満も
【ベルリン=伊藤寿庸】欧州議会は4日、トラック労働者の過重労働を制限する「モビリティー包括案」を可決しました。長距離トラックの運転手が、車内泊をしながら、何カ月間も欧州各国を移動し続けるような搾取をやめさせるための規定が含まれています。今後欧州理事会で各国政府の協議を経て立法化されます。
欧州運輸労連(ETF)などは「社会的ダンピング」の一掃を求めてきた運動の成果と歓迎しました。一方で、低価格を売りにシェアを広げてきた東欧・バルト諸国からは不満が出ています。
具体的には、▽運転手が最長4週間に1度は自宅に戻れるようにする▽週休は、車両から離れて取得する―ことなどを雇用主に義務付けます。
ある国の車両が、他国で集荷・配達を行うのは1度に3日間までに制限し、その後は会社が登録している国に60時間滞在しなければなりません。これによって、西欧の企業が労働条件の緩い東欧諸国にペーパー会社をつくって、本国の高賃金と労働規制を逃れる「社会的ダンピング」を予防します。
また派遣労働の新たな規定によって、他国で働く労働者には、第1日から現地の労働者と同等の賃金を支払わなければなりません。これにより、東欧諸国の派遣会社から西欧諸国に派遣されて働く労働者は、東欧の安い賃金ではなく、西欧諸国レベルの少なくとも最低賃金を受け取ることになります。ただ輸送の出発地点と終着地点がいずれも運転手の出身国である場合は例外とされており、「低賃金と劣悪な労働条件につながる抜け穴」との批判があります。
運転手の休息時間についての規則は賛成394、反対236でしたが、運転手の派遣労働についての規則は、賛成317、反対302のきん差でした。
ETFのモリールス議長は、難航した協議が妥結したことを「喜ばしい」とし、「欧州全域の組合が、搾取と不公正な競争、社会的ダンピングとたたかってきた運動の成果だ」と歓迎。他方、南ドイツ新聞5日付によると、ポーランド社会民主党の欧州議会議員は「ルーマニア、リトアニア、ポーランドのトラック運転手に対する差別だ」と批判しました。