2019年3月23日(土)
主張
消費税増税「対策」
いよいよ混乱が増すばかりだ
安倍晋三政権が10月から強行しようとする消費税率の10%への引き上げに向けた、「十二分の対策」なるものの中身が、さらに具体化されてきました。
複数税率の対象品目の線引きや、キャッシュレス決済時の「ポイント還元」のためのQRコードの統一規格、「プレミアム付き」商品券の発行は9月30日までに生まれた2歳以下の子どもがいる世帯にするなどです。買う側にも売る側にもわかりにくく、煩雑なことがいよいよ浮き彫りになっています。深刻な消費不況の中で、負担と混乱を拡大する消費税増税中止を、直ちに決断すべきです。
増税強行の前提は崩れた
安倍首相は、消費税増税による消費の落ち込みに「十二分の対策」を取り、「いただいたものをすべてお返しする」と繰り返し国会で答弁しています。しかし、「返す」ぐらいなら、最初から増税しなければいいだけです。
安倍政権は昨年の秋、都合のいい数字だけ持ち出して、経済が「成長」しているから、予定通り、消費税の増税を実行すると決定しました。しかしその後、個人消費の引き続く低迷や、米中の貿易摩擦の影響を受けた輸出の不振が明らかになり、今では政府自身、景気は「下方への局面変化」にあることを認めざるを得ません。増税の前提は崩れています。
増税だけでなく、「十二分の対策」自体が、国民の不安を広げています。複数税率の導入で、税率が8%に据え置かれるのは食料品や宅配の新聞だけです。酒類のみりんは税率10%、食料品のみりん風調味料は8%、同じ新聞でも、宅配は8%、コンビニや駅の売店で買えば10%など、複雑です。これにキャッシュレス決済時の「ポイント還元」が加わると、中小商店で買った食料品は、持ち帰れば8%から5%の還元分を差し引いた3%で、店内で食べれば5%になるなど、買う場所、買い方、買う方法で、5通りもの税率が生まれるなど、ややこしいことこの上ありません。
町の八百屋さんで大根1本買うのに、カードで買う人がいるでしょうか。“大混乱”です。
キャッシュレス決済の一つ、スマホなどのQRコードをかざして識別するための統一規格は、今月末に正式決定します。決済方法の乱立に対応するためですが、誤請求のおそれは完全に払しょくできず、利用者にも業者にもコスト高になる懸念が指摘されています。
「プレミアム付き」商品券の発行は、2万円分で2万5千円分の買い物ができるものです。現金で買う分を商品券で買うだけで、消費の拡大にはつながりません。しかも商品券を購入できるのは、低所得者や、9月30日生まれまでの2歳以下の子どものいる世帯に限りました。「恩恵」のない人たちの、不公平感が増すばかりです。
国民の多数が「反対」
直近の世論調査でも、「朝日」は「景気が悪くなった」が49%、消費税増税に「反対」が55%(19日付)、「産経」とFNNの調査でも、消費税増税に「反対」が53・5%(同日付)となっています。
国民の多数が反対しているのに増税を強行するのは、それこそ民主主義に反します。「代表なくして課税なし」が税の大原則です。安倍首相に政権を担う資格がないことは、明らかです。