2019年3月21日(木)
消費税増税・国保値上げ・財源・野党共闘
BSフジ番組プライムニュース 志位委員長、大いに語る
日本共産党の志位和夫委員長は19日夜放送のBSフジ番組「プライムニュース」に出演し、統一地方選・参院選の大争点になっている消費税10%増税や国民健康保険料(税)の連続値上げの危険、それらを打開する財源論、野党共闘などについて語りました。聞き手は、フジテレビの松山俊行報道局解説委員、竹内友佳アナウンサーです。
「いまの経済情勢のもとで消費税を上げていいのか」が問われている
冒頭、消費税に対する日本共産党の考えを尋ねた竹内氏。志位氏は「消費税という税金は逆進性、つまり所得の少ない方ほど重くのしかかる税金です。私たちは消費税そのものに反対していますし、将来的に廃止を目指しています」と説明したうえで、「いま大事なことは、消費税に賛成の方も反対の方も含め、『こんなに景気が悪いもとで増税を実施していいのか』を議論し、『今年10月からの10%はやめさせる』という一点で協力するということだと訴えています」と述べました。
また、「政府は安定した財源として消費税の重要性を訴えているが」(松山氏)との見方に対し、「景気が良くても悪くても、税収が得られるのはその通りですが、逆にいうと、どんなに景気が悪くて暮らしが苦しくてもかかってくるのが消費税」と指摘。1997年の消費税率3%から5%への増税を契機に日本経済が長期低迷となり、2014年の8%増税によって深刻な消費不況に陥った歴史を振り返り、「いまの経済情勢のもとで上げていいのか。これが問われるべきです」と提起しました。
「景気回復の温かい風」が吹いているのは安倍首相の頭の中だけ
フジテレビ系列FNNの世論調査(16~17日実施)で、消費税10%増税に「反対」53・5%で「賛成」の41・0%を上回り、「景気回復の実感はない」が83・7%にも及んだことが紹介され、消費税増税と日本経済の現状をめぐってやりとりになりました。
志位 (世論調査の結果は)まさに国民のみなさんの実感を表していると思うんですね。安倍首相が今年年頭に、「景気回復の温かい風が全国津々浦々に届き始めた」と言ったんですけども、全く実感がないわけですよ。「温かい風」が吹いているのは安倍首相の頭の中だけということになるわけです。
実際、内閣府が3月7日に発表した(1月の)景気動向指数で3カ月連続悪化ということになりました。景気の基調判断について、これまで「足踏み」だったものを「下方への局面変化」と下方修正しました。「下方への局面変化」との判定を前回行ったのは、2014年11月、消費税を8%に増税した直後です。つまり、増税の影響で景気が悪化して出したんです。ところがいま、増税前にこういう景気悪化の可能性を認めた。いわば、坂道をころげ落ち始めているというところで、後ろから(増税実施で)ぼーんと足でけったらそれこそ突き落とすことになる。今のこういう状況のもとでの増税の強行は本当に経済にとっての自殺行為だと強く言いたい。
松山 一方で政府は、「戦後最長の景気拡大局面は続いている」という認識を示しています。
志位 この景気動向指数というのは、いろんな経済指数を、いわば機械的に主観の入る余地がない形で指数にしたものです。これでもう実際に景気悪化の可能性を認めたわけですから。やはり、これが実態をあらわしているし、国民のみなさんの8割が「回復の実感がない」としている実感ともあっていると思います。
家計消費は深刻なマイナスが続く―所得が恒常的に奪われている
志位 今の景気をみる際に一番要になるのは家計消費だと思います。経済の6割を占める消費がどうなっているか。この前(2月12日)、安倍さんと(衆院)予算委員会でずいぶん議論したんですけども、総務省がやっている「家計調査」を見ますと、14年4月の8%増税を契機に実質家計消費支出がどんと落ちまして、5年連続家計消費がマイナスなんですよ。増税前に比べてだいたい1世帯当たり25万円減っている。
安倍さんは「GDP(国内総生産)ベースでは持ち直している」と言うので、「一国全体のGDPベースでも(帰属家賃を除いた家計消費支出は)消費税増税の後、うんと下がって増税前を回復していない、水面下に沈んでいる、水面下じゃないですか」と安倍さんに言いましたら、「水面上に顔を出していない」とお認めになった。
松山 (消費税8%増税前の)13年の平均の部分から、比較して水面に入っていると。
志位 そうです。増税前と比較してだいたい3兆円くらい水面下だと。人に例えれば水に溺れている。増税は、溺れている人の頭を押さえつけ、足を引っ張って沈めちゃうということになるわけです。
家計消費という日本経済の6割を占める土台のところが総務省の「家計調査」のベースでも、GDPベースでも両方ともマイナスなんですね。つまり増税の打撃を回復していない。回復していないところにまた増税をやれば、消費がガーッと冷え込んで、経済全体に深刻な破滅的影響を及ぼすことは明らかだと思うんですよ。
松山 まさに2014年の税率引き上げ時の直前の駆け込み需要と直後の反動減と言うのがあって、ものすごい景気が落ち込んだと。この反省から政府は、それなりの景気対策を打って、そうならないようにしようとしているようですが。
志位 「反動減」だけでなく、ずっと減少が続いているんですね。さっきの家計調査でも、5年連続マイナスなわけでしょう。だから、「駆け込み需要」と「反動減」とよく言うんですが、一時のことじゃないんですよ。つまり増税が1回やられますと、例えば5%から8%に上がったら、8兆円の負担増になるんですよ。8兆円が2014年だけじゃなくて、15年、16年、17年、18年と毎年8兆円とられるわけですよ。所得が恒常的に奪われて、こういう事態になっている。だから「駆け込み需要」と「反動減」の対策だけやればいいというものじゃない。増税そのものが経済に破壊的な影響を及ぼしたのがこれだけ明らかになっているのだから、これはとめなければいけないと思います。
賃金・雇用状況―名目でなく実質で見るとマイナスが続く
家計消費の落ち込みの実態とともに、志位氏が強調したのが所得・賃金の問題でした。次のようなやりとりになりました。
志位 もうひとつ大事なデータは、所得・賃金だと思うんですね。働く人の賃金がどうなっているか。安倍さんは議論していますと、消費の落ち込みは認めざるをえない。しかし「賃金が上がってきている」「だから、いずれ消費のほうも力を得て上がってくるから(増税をやっても)大丈夫だ」という議論なんですね。
竹内 安倍総理は(志位氏が質問した)2月12日の国会答弁で「連合の調査によれば今世紀に入って最高水準の賃上げが実現しており、中小企業の賃上げは過去20年間で最高となっているのも事実」と強調しています。今年の春闘は、15日に連合が発表した賃上げ率は平均2・16%で去年並みとなっています。どう評価しますか。
志位 安倍さんは繰り返し「今世紀に入って最高水準の賃上げ」と言うんですけれども、この数字は、二つ下駄をはいているんですよ。
一つは定期昇給を含んでいるんです。定期昇給は年齢などに応じて賃金が上がっていくシステムで、これを確保するのは大事ですけども、定期昇給が確保されたとしても賃上げになりません。賃上げというのはベースアップを勝ち取らないと賃上げにならない。この賃上げ率は平均2・16%とあるんですが、そのうちベースアップは今年は0・62%。去年の0・77%に比べても下がったんですね。
これはしかも名目なんですよ。実質ベースアップと言うことにすると、マイナスになる。つまりベースアップどころかベースダウンになる。定期昇給を除いて考える。物価上昇を考慮して考える。そうしますとベースアップでなくて、ベースダウンが続いているというのが現状です。こういう状況をもって「今世紀最高水準の賃上げ」というのはやめるべきです。一種のフェイク(ウソ)です。
松山 労使交渉における賃上げ率の推移は、2002年から18年までだと、名目の数字だと徐々に徐々に上がっているように見えますけども。
志位 (物価上昇分を除いた)実質で計算してみたら、最近の5年間は1・1%。ですから「今世紀に入って最高」どころか、「最低」になるわけです。しかもその中でベースアップについて実質でみたらもっと下がっちゃってマイナスに行ってしまう。自分の都合のいい数字だけみないで、全体をありのままに見て判断しないと間違う。
消費が冷え込んでいるだけじゃなくて、賃金も実質ではマイナスになっている。ベースアップというけれども、ベースダウンになっている。そのもとで今の日本経済には増税に耐える力はないんですよ。そこをみる必要があると思いますね。
松山 ある意味、デフレが解消したことによって、逆に実質賃金が下がってくるのは自然な流れのような気がするんですけども。
志位 デフレが解消というよりも、13年から18年で実質が1・1%に落ちているのは、増税のせいですよ。増税で物価がドーンと上がって、それで下がったと。これは自慢になる話ではないんですね。
私は賃金をはかる水準で一番大事なのは、実質だと思っています。いくら名目賃金が上がってもそれを上回って物価が上がっちゃったら買えるものが少なくなっちゃいますから。ですから国民の暮らしに本当に心を寄せるんだったら、名目でなくて実質で見るべきだと。実質ではマイナスという数字が出てくるわけですから、やはりそれを踏まえた政策判断をするべきですね。
なぜ賃金が上がらないか―安倍政権の賃下げ政策と増税政策の結果
「企業の内部留保ばかりが積みあがってしまってなかなかそれが賃金に反映されないという批判もよくありますけれども、なかなか賃上げが表に出てこないのはなぜ?」と松山氏。志位氏は次のように答えました。
志位 大きな要因としては、政府自身が賃下げ政策をとっている。たとえば「残業代ゼロ法案」を強行しましたよね。あれ残業代を一銭も払わないというものですから、文字通り賃下げの法案ですよ。あるいは、労働者派遣法の改定を強権的にやりました。これは、これまで(派遣労働の)期間制限が3年と決まっていたのを取り払って、いつまでも派遣で使い続けられると。これも非正規への置き換えをひどくしますから、賃下げ政策なんですね。
だからいくら安倍さんが経団連に「賃上げやってくれ」と言っても、自分がとっている政策がまさに賃下げ政策になっているわけですから、自分でブレーキをかけているわけですよ。
松山 一方で企業側からの論理でみると、雇用の安定ということを重視するうえでは、なかなか賃上げ、大胆な賃上げには踏み切れない事情もあると思うんですけれども。
志位 企業側で見た場合、今年のベースアップにしても多くが(昨年比で)下にいきましたよね。いま、企業がみているのは今年の景気がどうなるかだと思うんですよ。東京商工リサーチがやった全国8000社対象の調査で、だいたい58%が「今年は消費税増税で景気は悪化する」と答えているんですね。増税で景気が悪化するというのが先に待っているものだから、賃上げも抑えちゃおうという動きに企業の側はなっている。
ですから安倍政権がやっている政策そのものが、増税を一方でやる、一方で賃下げ政策やる。これが賃上げのブレーキになっているわけです。これを変えなくちゃいけないと思いますね。
「すべて返す」なら増税するな―「天下の愚策」のポイント還元
「今回は頂いたものをすべてお返しする形でしっかりと消費喚起の対策を行っていきたい」――消費税10%増税でこう述べる安倍首相。「増税対策」で持ち出されるポイント還元などをめぐってもやりとりになりました。
志位 この前、予算委員会でそう総理がおっしゃったものですから。「すべてお返しするくらいだったら、初めから増税やらなければいいじゃないか」と言ったんです。増税の影響が5兆円余り、それで6兆円の「対策」を組んだというふうに言うんですけれど、それほど景気が心配だったらやらなければいいということになりますね。
ただ中身をみますと、消費喚起の対策とは到底言えないものばっかりなんですよ。
いろんな問題がありますけれど、一番の目玉にされているのが、いわゆる「ポイント還元」。だいたい還元の規模が来年度予算で組んだのが1800億円ですから、焼け石に水。しかも9カ月で終わるわけですよ。期間限定だと。
ポイント還元について中小の小売店のみなさんにお話を聞きますと、カード会社に対する手数料の負担がとても重くて商売続けるのが大変だという声が出てくる。いろんな弊害もたらす。消費喚起策とは到底呼べない中身になっていますね。
松山 社会のキャッシュレス化を進めるために、今回こういった対策を打っているという側面もあると思うんですけれど。
志位 キャッシュレス化を、増税の時のポイント還元というやり方で、いわば強制的にこれを機会にやってしまえと押し付けていくというやり方はよくないと思います。
たとえば手数料という問題があります。中小小売店がもしこれをやったとしますと、カード会社に手数料を払わなければならない。9カ月間に限っては(手数料は)最大3・25%、その3分の1は補助をするということになっているんだけれど、それでも売り上げの2%の手数料は払わなければならない。さらに9カ月が終わったら、手数料補助も、上限もなくなって、だいたい5%から10%の手数料払うんですよ。これでは到底やっていけない。中小小売店のみなさんからしても負担だけだという大変強い批判があります。
松山 まさに共産党としてどういったあたりが一番問題だと。
志位 今言ったこの手数料がとても重荷になる。それから、キャッシュレス決済に、小さなお店とか、高齢者の方がやっているお店は、対応できなくなるお店が出てくる。それから、キャッシュレスになりますと、商品が売られても現金を手にするのは、たとえば半月後とかひと月後とかになるわけです。ですから、その間は手持ちの資金がなくなっちゃって、資金繰りが回らなくなる。私は東京都北区の十条銀座商店街に行ってお聞きましたが、だいたいこの三つが共通して出されました。非難ごうごうという感じです。「天下の愚策」と言われますけれど、私はそういうものだと思います。
松山 あともう一つ指摘されているのが、さまざまなケースで、さまざまな税率が適用されることが検討されていて、それがすべて見ただけでも6通り5段階で生じるということです。
志位 これは混乱は必至だと思いますね。つまり買うもの―食料品かそうじゃないか。それから、買う場所―中小店舗か大手チェーンか。そして最後に買い方―キャッシュレスか現金か。この三つの要素でたくさんの税率が、五つも出てくると。これは現場は大変な混乱を生むと思いますね。負担も出てくると思います。
松山 ただ政府側は諸外国ではこのような何段階かの税率を導入している国はあって、機械的に処理をしていけば特に問題は生じないということも言っていますけれど。
志位 ポイント還元とセットになってこういうふうになっちゃうんですよね。「軽減税率」だけだったら――私たちは据え置き税率と言っているけれど――ここまで複雑にならないけれど、ポイント還元とセットになるものだから、もう複雑怪奇な税率になってしまうと思うんですね。
それから「軽減税率」とよく言われますけれど、10%に全体として上げるなかで食料品を8%に据え置くというだけなんですよ。諸外国のように食料品ゼロにするということになりましたら、逆進性対策にもなると思うけれど、そういうものじゃないんです。私は、こういうやり方というのは百害あって一利なしのやり方だと思います。
世界経済との関係でも増税は無謀―外需頼みをやめ、家計を中心に内需の応援を
松山 あと、もともとの問題として消費税率10%への引き上げができる経済状況なのかどうか。そこを政府も最終判断して決定すると思いますが、これについてはさまざま諸外国の要因なんかも関連してくると思うんですが、このタイミングについては志位さんはどういうふうにみていますか。
志位 海外の経済との関係でも、私は、とてもタイミングは悪いと思います。この間のGDPの推移をみてみますと、「安倍政権の下でGDPが伸びた」と安倍首相がよく言うんだけれども、実質GDPの伸びは6年間で年平均1・2%なんです。アメリカ、ヨーロッパに比べても非常に低い、弱々しい伸びなんですね。
しかも、いったいどこで伸びているのかをみますと、輸出なんです。6年間で年平均4・9%伸びている。輸出が伸びているのは、中国にしてもアメリカにしても、これまでは外需が活発だった。ですから外需頼みで輸出をやる。そして設備投資をやる。これでなんとか日本経済を弱々しいながらももたせてきた。ところがその外需がいま中国経済も、EU(欧州連合)の経済も、アメリカも全部減速でしょ。ですから、外需頼みではやっていけなくなっているのが世界経済の状況だと思うんですよ。
ですから、もう外需頼みはやめて、内需を大事にする。内需の中心は家計ですから、それを応援し活発にする、足腰を強くする。これがいま大事なのに、(増税で)その足腰を壊してしまうことになると、世界の経済との関係でも大変なミスマッチが起こって、日本の経済を本当に壊すことになる。ノーベル経済学賞を受賞されたクルーグマンさんが、「今のタイミングでの増税は危ない」と世界の経済との関係でおっしゃっています。「私は反対だ」とも言っています。やっぱり世界経済との関係でも増税は無謀だと思います。
松山 それはひょっとしたら景気がもう後退局面に入っているかもしれないのに、その状態での増税というのはリスクが多いと。
志位 いや、国内の景気自体がもう悪化の可能性と政府も認めるような状況であるわけでしょ。それに加えて、海外の景気がいま言ったような、中国もアメリカもEUも減速がはっきりしている。それから米中貿易戦争という先の見えないリスク要因が出てきた。その時に、つまりもう海外に頼れないんだったら、内需をよくするしかないわけですよね。そのときに内需の中心である家計を壊すような増税やっていいんですかということがいま大問題だと思うんですね。
松山 米中の貿易摩擦あたりも、かなり各国のマーケットは見ていると思います。結果次第では、かなり大きな悪影響を世界経済に及ぼすかもしれないとの見通しで。
志位 そう思いますね。米中の今のいわゆる貿易戦争は、だれもこの結果は見通せないと。これは専門家の共通した見解じゃないですか。まったく不透明なんですよ。
安倍首相は2016年に消費税10%の実施を延期しましたでしょう。あの時の最大の理由として「中国経済など世界経済が不透明だ」といった。 あの時が「不透明」だとしたら今の世界経済はもう「真っ暗闇」ですよ。ですから、こんなタイミングで増税やるのは世界経済との関係でも本当に無謀だと。
統一地方選・参院選で「増税ノー」の審判をくだそう
松山 ただ、ここまで政府側が10%への引き上げやりますと言っているなかで、途中で“経済状況がよくないのでやっぱり引き上げやめます”と言ったら、そこはそこで世界経済の混乱要因の一つになってくると思いますけれども。
志位 これは間違った政策判断をやったわけだから、それはやっぱり間違いはただしてもらうと。ただ、安倍首相がたださなければ、統一地方選挙、参議院選挙で国民が審判くだして、こういう間違った道を止める。増税実施までに二つの選挙があるわけですから、国民の力で止めるということが大事ではないでしょうか。
松山 政府が最終判断するタイミングは最低限どこまでにやるべきって、そういう見通しみたいなものは。
志位 一刻も早く増税の中止を決定すべきだと思うけれど、しかし二つの選挙がありますよね。参議院選挙で安倍政権を大敗に追い込めば増税を止めるという道が開かれると思いますよ。
いまでも高すぎて払えない国保料―連続値上げの危険が迫っている
消費税問題に続き、志位氏が14日の記者会見で告発した高すぎて払えない国民健康保険料(税)の連続値上げの危険と、引き下げのための1兆円の公費投入の提案が取り上げられました。志位氏は次のように述べました。
志位 まず国民健康保険という制度は、いまは構造的な危機に陥っている。どういうことかといいますと、加入者の方は低所得の方が多いんですよ。職をもたない高齢者、あるいは非正規で働いている若者、こういう方々が加入者ですから。所得が少ないんですね。
ところが保険料はもう飛び切り高い。サラリーマンの「組合健保」に比べますと1・7倍という水準になっている。ですから高すぎて払えない。やむなく滞納になる。(加入世帯の)15%以上が滞納なんです。そうしますと保険証を取り上げられ、お医者さんに行けない。命を落とす方も少なくないという構造問題があるんですよ。
それが、いわゆる「国保の都道府県化」でどうなるか。一番の問題は、この「都道府県化」に伴って、これまで市町村が独自に保険料を抑えるために(一般会計から)国保会計に繰り入れていた公費の繰り入れをなくしてしまう。市町村が独自に行っている子育て世帯、ひとり親世帯などへの減免もなくしてしまう。そういう保険料を抑えるための公費繰り入れを全部なくして更地にしちゃうと。
そのために、(市区町村ごとの)「標準保険料率」というのを各都道府県に算出させるんです。この「標準保険料率」というのは、公費繰り入れを全てなくしたことを前提に計算するんですね。この「標準保険料率」を保険料のいわば「値上げ目標」にして、ここまで値上げしなさいというふうに市区町村を追い立てるという値上げ圧力が強烈にかかりはじめている。
私たちが調べてみますと、本格的に始まるのは19年度、来年度からなんですけれども、来年度の「標準保険料率」と今の保険料と、このギャップを見ますと、全国8割の市区町村で平均4万9000円(給与年収400万円、4人家族)もギャップがある。つまり4万9000円の値上げの危険が迫っている。
しかもこの「標準保険料率」というのは、(高齢化にともなう給付の増大などによって)毎年上がっていく危険があるんですよ。つまり19年度、20年度、21年度、22年度、23年度まで、今後4~5年間、この「標準保険料率」が上がっていって、それにめがけて保険料がぐーっと毎年連続的に値上げされる危険がある。
こんなことになりましたら、さっき言った国民健康保険の構造問題がいよいよ抜き差しならないところにきて、国民の命と健康が破壊されるし、制度がもたなくなる。
国保会計への独自の繰り入れを行う権限は自治体にある
松山 必ずしも市区町村は、都道府県が決める「標準保険料率」に従わなければいけないというわけではないわけですね。
志位 ないです。
松山 だけどこれに引きずられてしまう。
志位 そうなんです。ただ、政府の答弁でも、市区町村に独自の繰り入れをやめなさいというふうに指示は出すことできない、独自の繰り入れやってもいいですよということはいうんです。市区町村が決める権限はあるんです。
都道府県も、これを市区町村に押し付けないで、ちゃんと繰り入れは必要だということで頑張ることもできるんです。これは地方自治ですから。本来、そういう役割を果たすかどうかが今問われていると思うんですね。ですから、言われたからやらなきゃならないなんてもんじゃない。しかし相当強い圧力が今後ずーっと連続的にかかってくる。19年度の「標準保険料率」とのギャップをみても4万9000円の値上げの危険が現に迫ってきているということですね。
松山 それは志位さんが会見などでおっしゃっている「年収400万円、4人世帯」で平均4万9000円の値上げの危険があると。必ず4万9000円の値上げになるというわけではなく最悪そうなると。
志位 最悪そこまでいく可能性がある。実際やっているところもありますよ。それに合わせちゃっているところもある。ですからそういう危険が生まれているということですね。最悪というのは、19年度で最悪ということで、さっき言ったように「標準保険料率」自身が20年度以降も上がっていきますから、値上げのゴール自身が上がっていきますから値上げが4万9000円以上になっていく危険もあるんですね。
松山 国民健康保険制度の見直しでは、国が3400億円の追加的財政支援するわけですよね。単純に考えると、国民健康保険の各自治体のレベルでは負担が軽減されるんじゃないかって一瞬考えるんですが。
志位 ならないですね、これは。18年度についていいますと、つまり今年度は、「都道府県化」の初年度の年ということで、統一地方選挙もありますでしょう。国は「激変緩和」をやりなさいという指示を出したんですよ。ですから据え置きのところ、上がったところ、下がったところもあり、全国的な値上げという事態にはなっていません。しかし19年度以降は、いまいった問題が出てくるのです。
公費1兆円投入で、「均等割」「平等割」を廃止し、「協会けんぽ」並みに引き下げる
松山 この問題を改善するためにそういった何かしら方策があるのか。これについては志位さん何かお考えが…。
志位 全国知事会のみなさんが、この構造問題を打開するためには1兆円の公費投入で、「協会けんぽ」並みに引き下げようという提言をやっているんですよ。私たちは大賛成です。その提案を受けて、具体化する政策を出しました。
高すぎる国保料の中でも一番悪質なのは、家族の人数に応じてかかる「均等割」というのがあるんです。たとえば東京23区だったら赤ちゃんが1人増えたら保険料が5万円増えるんですよ。2人増えたら10万円。冗談じゃないというような増え方をするんですね。この「均等割」と、家族ごとにかかる「平等割」は、いわば人頭税みたいなものなんですね。近代税制では一番やっちゃならないものですよね。
だから、1兆円入れてこの「均等割」と「平等割」を廃止する。そのことをやれば「協会けんぽ」並みの保険料に引き下げることができる。たとえば東京23区でしたら、いま年収400万、4人家族でだいたい保険料が42万円ですが、22万円くらいまで下がります。そういう大改革をやらないと、国保は持続可能にならないと。
財源をどうする―富裕層・大企業への優遇税制の是正で生み出せる
松山氏は「1兆円の公費を投入するとなると、それなりの財源を確保しなきゃいけないという話になりますけれど、その財源どこから捻出するのか」とズバリ質問。志位氏は次のように答えました。
志位 これは先ほどの消費税10%を中止した場合、代替財源をどうするかということも絡んできますよね。まず消費税10%を中止するためには、だいたい5兆円ぐらいは財源がいります。それから今の(国保への公費)1兆円で、6兆円くらいが緊急の財源として必要になってくる。
まず手をつけるべきは、大企業に対する優遇税制です。法人税の実質負担率が、中小企業は18%、大企業は10%なんですよ。研究開発減税など大企業しか使えない優遇税制があるためにうんと低いんですね。ですから、これをせめて中小企業並みに払ってもらうとだいたい4兆円出てきます。これが一つ。
それからもう一つは、所得1億円を超えますと逆に税負担率は下がってしまう。株取引にかかる税金が一律20%とうんと軽く、大株主になればなるほど税負担率が下がるという逆転がある。この不公平税制をただす。さらに、下げすぎちゃった所得税・住民税の最高税率。最高税率は65(%)だったんですが、いまは55(%)まで下がっている。これを元に戻すというようなことでだいたい3兆円。大企業と富裕層に対する優遇税制をただして合計7兆円くらいまずお金をつくる。それを10%の中止の財源と、国保値下げの財源にあてていくということをまず緊急にやろうということを言っています。
松山 ただ経済評論家の方なんかから言わせると、外資をどんどん日本に呼び込むためには、やっぱり法人税を低く据え置いておかないと外国の企業がどんどん日本に来てくれないだろうという意見があります。
志位 大企業の実質負担率10%というのは、いくらなんでも低すぎる。私たちは無理筋を言っているんじゃなくて、中小企業並みの18(%)くらいは払っていいじゃないかということですから。これは海外との関係でも齟齬(そご)をきたすことにはならない。
いま日本に海外の資本がなんで投資しないかといったら、需要がないからですよ。政府の調査でも、「投資先にどこを選ぶか」と聞くと、多くの企業が「需要のある国」を選ぶ(と答えている)。だから、そこのところきちんとやらないでおいて、法人税をともかくどんどん下げていく。トヨタしか使えないような研究開発減税に何千億円ものお金を減税してやるというのは、これはやめるべきだと思います。
松山 先ほど志位さんの話の中では、いわゆるキャピタルゲインに対する課税ということで20%から25%、引き上げたらどうかという話がありましたけれど、これも日本のマーケットを魅力的な市場と感じて、かなり外国人投資家の株式売買というのがあって成り立っている市場なわけですが、この外国人投資家も一斉に離れて行ってしまうのではという懸念はあります。
志位 25%にせよといっているのは、経済同友会とOECD(経済協力開発機構)ですよ。世界が言っている。それから経済界自身が言っている。
だいたい株取引にかかる税金というのは、海外ではだいたい3割以上はとっています。私たちとしてはいまの20%を、株の配当では総合課税にするし、譲渡では30%に上げる。これは世間並みに払ってもらうということであって、国際水準からみても全然無理筋じゃないと思います。
この5%のことに限って、(衆院予算委員会で)私は安倍首相に聞いたんですよ。「これ経済同友会とOECDが言っているんだから、せめて5%、株取引の税を上げたらどうだ」と言ったけれど、それもやるって言わないんです。それすらやらないでおいて、庶民の方の増税はあくまでもしがみつくのは、これはおかしいですね。
トランプ大統領言いなりの軍拡にきっぱりノーを
財源問題をめぐっては軍事費も話題に。松山氏は「2019年度から23年度の防衛費総額は27兆4700億円。東アジアをめぐる安全保障環境が厳しくなってくる中で、これぐらいの費用は必要と(政府が)出している数字ですが」と志位氏に問いかけました。
志位 いろんな切り込みが必要です。たいへんな大軍拡になりますから。まず軍事費の中でも、米軍への「思いやり予算」をやめる。これは日米地位協定でも出す義務はないわけです。それからいま辺野古の埋め立てを日本国民の税金でやっているんですね。この米軍再編予算もやめる。だいたいこれで4000億円ぐらいはまず削るべきだと。それから正面装備も、(米大統領の)トランプさんの言われるままF35を100機追加で買うと。それで2兆円というでしょ。ああいうトランプさん言いなりの「浪費的な爆買い」はやめる。それがまず必要です。
松山 ただアメリカ側はヨーロッパのNATO(北大西洋条約機構)諸国などにも言っていますけれども、対GDP比でもっと積み増して防衛費を負担してくれということを言っています。日本に対する駐留経費負担もこれから先、(米通信社の)ブルームバーグの記事などによると、これまでの1・5倍の負担を各国に求めてくる可能性があるとも伝えられています。
志位 それはトランプ大統領が言っていることでね。それに従っていったらどうなるかということは、いまブルームバーグの話で出ましたけれども、在日米軍の駐留経費について、「思いやり予算」などだけじゃなくて、米側が払っているものも含めた総額の1・5倍(支払え)というんでしょ。
松山 米軍の給与まで払ってほしいみたいなのもあるという記事がありましたけれど。
志位 それに、さらに辺野古埋め立ての米軍再編経費もあわせたら2兆円くらいになりますよ。そんなお金を毎年毎年やるということになったら、まさに財政破たんになる。トランプ大統領の言いなりで軍事費を増やす、破天荒なやり方はきっぱりノーと言わないと日本の国は成り立ちません。
竹内 いま日本が置かれている情勢、東アジア情勢を含めてどういうふうにみていますか。
志位 やはり今、とくに北東アジアの問題について、この間いろんな難しい問題もあるけれども、全体の流れとしては去年大きな変化が起こった。つまり南北首脳会談、米朝首脳会談が行われました。そして、一昨年はずいぶん戦争の危険も感じたぐらいの緊迫した局面だったけれども、対話による解決という道筋がひかれた。そういう流れが去年起こったわけですよね。ハノイの米朝首脳会談は合意に到達しませんでしたけれども、両方とも対話による解決でやっていこうという意思は示しているわけです。困難はあっても、いまはいかに対話によってこの地域の平和の体制を築くか。そして非核化をやるか。これに全力を注ぐべきであって、そのときにどんどん軍拡やっていくというようなことを日本がやるのは、そういう流れからしても逆行だと私は思いますね。
「本気の共闘」でこそ安倍政権・自民党を倒す力が出てくる
参院選で野党共闘をどうすすめるのか。1人区での候補者擁立をめぐって松山氏は「共産党としては今回、野党間で相互推薦・相互支援という形での候補擁立をやるべきだと主張されていますが、これに対し立憲民主党、国民民主党はなかなか乗ってきていないような印象を受けますが」と質問。志位氏は答えました。
志位 いま話し合っているところです。16年(の参院選で)は32の1人区全部で野党統一候補を実現し、11(選挙区)で勝った。共闘効果が証明されたわけです。今度はもっと勝つ必要がある。今度は13年(に当選した議員)の改選になるわけで、ほとんどが与党なんですよ。ですから野党が本当に頑張ればうんと力関係を変えられる。自民、公明とその補完勢力を少数に追い込むぐらいの目標をもって、野党は本当に1人区で「本気の共闘」をやる必要がある。
この「本気の共闘」といった場合、いろんな問題があります。平和の問題でも、暮らしの問題でも、民主主義の問題でも、きちんと政策的な大義の旗を立てる必要があると思うんですが、同時に、やはり共闘です。これまでの2回の過去の参議院選挙、衆議院選挙では共産党が一方的に候補者を降ろすという形で共闘をつくってきました。私たちとしては16年の参議院選挙では最初の経験でしたから、何としても成功させたかったですし、17年の総選挙は共闘を壊す難しい流れが起こったもとでしたから、そういう対応がよかったと思っています。しかし、やはり共闘だから、お互いさまの精神で、お互いに譲るべきところは譲って、お互いに推薦、支援しあうという、本当の意味での「本気の共闘」の体制がつくられることが一番力が出る。安倍政権、自民党を倒す力が出てくると思う。ぜひそういう方向に行きたいと。
松山 今回もやはり共産党が候補者をたてているところで自主的に降ろしてくれないと、なかなかほかの野党の統一候補としてうまくまとまらないのでは、という意見が立憲民主党や国民民主党からは出ています。どう折り合いますか。
志位 私たちが「一方的に降ろすということはしません」ということは、党の中央委員会総会の決定でも確認しているんです。ですから、私たちとしては「私たちもここを譲るから、あなたもここ譲ってください」という話し合いをやって、(野党)全体が伸びていくたたかい方をやってこそ、初めて「本物の共闘」になっていくと思うので、それを追求したいと思います。
松山 最低限でも、一つか二つかの1人区は共産党の候補を出したいということですか。
志位 そんな一つとか二つという数字ではありません。16年でも1カ所は共産党の公認候補で一本化したわけですから。やはり、本格的な相互主義の立場に立った協力を目指したいと思います。それが一番力が出る。相手を倒すためにはそれをやらなくちゃだめだと。参議院で自公と補完勢力を少数に追い込んで、政局の主導権を野党が握り、衆議院選挙に追い込んで、衆議院でも多数をとる。連立政権をつくるというぐらいのつもりで野党が頑張らなかったら、国民から「野党は何をやっているんだ」ということになりますから、そういうつもりでいま取り組んでいるところです。
経済成長と財源健全化の両立で「提言」―消費税に頼らない別の道を
最後に「経済成長と財政健全化の両立に必要なこと」をテーマにした提言で志位氏はフリップに「消費税に頼らない別の道」と書き、次のように述べました。
志位 消費税に頼っていたら、経済成長はできません。消費を壊し、内需を壊して、経済成長はできない。そして経済成長ができなければ財政健全化もできない。ですから消費税に頼る道はもうやめて、頼らない別の道を行くべきだと。
一言でいうと、負担能力に応じた負担――応能負担の原則にもとづいて抜本的な税制改革をやる。富裕層や大企業には応分の負担をしてもらう。そして歳出の無駄はカットしていく。そういう本当の税財政の改革をやって、消費税に頼らないで、経済も成長するし、財政の健全化も図る。私たちは具体的な提言を出しておりますが、そういう別の道への切り替えを訴えたいと思います。