2019年2月21日(木)
主張
「自衛官募集」発言
若者の強制動員の企て許すな
安倍晋三首相が憲法9条改定の新たな口実として、自衛官募集についての自治体の「協力拒否」を持ち出しています。首相が執念を見せる9条改憲の狙いの一つに、若者である新規自衛官の適齢者名簿を自治体から強制的に提出させようという本音が込められていることを示しています。しかもその口実は、改憲運動を繰り広げる極右「日本会議」系団体が主張していることの受け売りであることも分かりました。危険極まりない安倍改憲を許さないたたかいが重要になっています。
名簿を提供する義務なし
改憲と自衛官募集をめぐる首相の発言は1月30日の衆院本会議答弁や2月10日の自民党大会での演説などで繰り返されてきました。
党大会の演説では、安保法制=戦争法の成立に触れた上で「いよいよ立党以来の悲願である憲法改正に取り組む時が来た」と強調し、次のように述べました。
「(自衛隊の)新規隊員募集に対して都道府県の6割以上が協力を拒否しているという悲しい実態があります」「この状況を変えようではありませんか。憲法にしっかりと自衛隊を明記して違憲論争に終止符を打とうではありませんか」
首相はこれまで自衛隊を憲法に明記しても「何も変わらない」としてきました。しかし改憲によって自治体の「協力拒否」という「状況を変えよう」というのは、その狙いをあけすけに語るものです。
首相が自治体の「協力拒否」として念頭に置いているのは、新規自衛官適齢者の氏名や住所、性別を記した名簿の提供です。
自衛隊法は「都道府県知事及び市町村長は、政令で定めるところにより、自衛官及び自衛官候補生の募集に関する事務の一部を行う」(97条)と規定しています。
しかし、同法施行令は自治体が自衛官募集の広報などを行うことを定めてはいるものの、名簿提供に関しては「防衛大臣は…都道府県知事又は市町村長に対し、必要な報告又は資料の提出を求めることができる」(120条)としているだけです。自治体に名簿提出の要請に応じる義務はありません。
全国で多くの自治体が個人情報やプライバシー権を保護する観点から本人同意なしの情報提供に応じていないことは当然です。
看過できないのは首相発言の発信源です。それは、改憲・極右団体「日本会議」の前会長と現会長が共同代表を務める「美しい日本の憲法をつくる国民の会」です。
同会が昨年12月に「憲法改正の国会論議」を求めて開いた集会で配布されたビラには、「地方自治体の6割強は、自衛隊の隊員募集に協力をしていません」「自治体が円滑に業務を遂行するため、自衛隊の憲法明記を」と記されていました。首相発言は、文字通りこの引き写しです。
「戦争する国」造り阻もう
もともと安倍首相の9条改憲論―9条1、2項をそのままにして自衛隊を書き込む―も、「日本会議」が震源地でした。その狙いは、戦力不保持を規定した2項を死文化させ、海外での武力行使を無制限に可能にすることです。そうした下で適齢者名簿を強制的に提出させることは、若者を戦場に強制動員することにつながります。
安倍首相による「戦争する国」造りを阻む世論と運動を大きくすることが急務です。