2019年2月19日(火)
主張
地球温暖化の課題
脱炭素社会へ本気で舵をきれ
温室効果ガスの削減に合意した国際的枠組み「パリ協定」の2020年からの実施を目前にした今年は、地球温暖化対策を加速させるための重要な年です。安倍晋三首相は、国会の施政方針演説で、6月に大阪で開催される20カ国・地域(G20)首脳会議の課題の一つとして「地球規模課題の解決」を挙げて、温室効果ガスの「大幅削減」が必要とのべました。しかし、日本政府の対応は立ち遅れており、積極的な目標引き上げと対策の立て直しへ舵(かじ)をきらなければ、世界への責任を果たせません。
世界では急速にすすむ
15年に採択し翌年発効したパリ協定は、産業革命前より「世界の平均気温上昇を2度より十分低く抑え、1・5度に抑える努力を追求する」との目標を定め、全締約国に温室効果ガス削減目標の策定を義務づけました。昨年末にポーランドで開かれた国連の気候変動枠組み条約第24回締約国会議(COP24)では、パリ協定を機能させる「実施ルール」の大枠を決め20年からの体制がつくられました。
難航していたCOP24の議論を合意へとあと押ししたのは、昨年10月に公表された気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の「1・5度特別報告」です。同報告は、世界の平均気温がすでに約1度上昇しており、今の排出量が続けば30年ごろには1・5度に到達し、気象災害や海面上昇、生態系の破壊など深刻な影響を与えることを警告するものでした。
温暖化対策は文字通り世界の焦眉の課題です。各国が温室効果ガスの削減目標をさらに引き上げるとともに、CO2排出の実質ゼロに向けて「脱炭素化」と再生可能エネルギーの大量普及に真剣に取り組むことが急務です。
気候変動の影響を最も受ける小さな国々やベトナム、フィリピンなど中規模国でつくる気候脆弱(ぜいじゃく)国連合は、16年のCOP22で、30~50年に再エネ100%にすると決め実現をめざします。参加国は世界の約4分の1に上ります。
各国政府だけでなく、非政府組織、自治体、企業など市民社会が、意欲的な目標と期日を定めて「脱炭素社会」へと行動しています。
日本政府はどうか。現在の日本の温室効果ガスの削減目標は、30年度に13年度比で26%減と設定しています。これは国際的な基準である1990年比に換算すると、わずか18%であり、「2度未満」目標の達成すら困難にしかねない低い目標です。目標を引き上げ、2030年目標は少なくとも90年比で40~50%削減とすべきです。
安倍政権は、昨年閣議決定したエネルギー基本計画でも、原発とともに石炭火力発電の推進に固執し、再エネ普及に後ろ向きです。温室効果ガス排出が最も多い石炭火力発電では、30基もの新規建設計画を容認し、世界の批判の的になっています。原発優先政策が再エネ普及の障害になっていることは、九州電力が原発4基を再稼働させる一方、太陽光発電などで生まれた電力の接続停止をくりかえしていることからも明白です。
エネ政策の抜本的転換を
世界では、再エネの急速な拡大によって電力のコスト低下が顕著に進んでいます。太陽光発電は8年で7割以上もコスト減となっています。原発建設費の高騰とは対照的です。日本のエネルギー政策の抜本的転換こそ必要です。