2019年1月30日(水)
主張
ベネズエラ危機
国民多数の意思による政治を
南米ベネズエラのフアン・グアイド国会議長は23日、憲法を根拠に暫定大統領就任を宣言し、大統領選をやり直す方針を表明しました。野党の有力候補を締め出した昨年の大統領選結果を認めず、1月10日から2期目に入ったとするマドゥロ氏に大統領としての正統性はないという主張です。
民主主義破壊、国民犠牲
日本共産党はかねて、ベネズエラ問題は暴力的弾圧、人道危機という点で、すでに国際問題であるという立場から、国民多数の意思にもとづく政治の実現を同国に申し入れてきました。現在の問題の核心は、大統領選挙のやり直しを通じて、政府の正統性の確立と民主主義を回復することです。
グアイド氏については、米国、ブラジルなど米州の半数近い国が支持を表明しました。マドゥロ氏はこれを「米主導のクーデター」と非難し、ロシア、中国などは同氏の支持を確認しています。
ベネズエラ国民は2015年12月の国会選挙で、生活悪化を背景に野党連合が3分の2の議席を占める圧勝をもたらしました。ところが、マドゥロ政権は国民の審判を受け入れず、新国会の発足前にその権限を可能な限り骨抜きにし、発足後は国会決議のほとんどについて最高裁から違憲、無効判決を引き出してきました。
政府の国会無視は、一昨年8月の制憲議会発足で極まりました。その目的は、国会の権限を根本からはく奪し、強権を支える「最高権力機関」を打ち立てるためでした。制憲議会議員を選出する選挙は、1人1票の投票原則さえ逸脱するなど徹底的に政権に有利になる仕組みでした。昨年の大統領選をお膳立てしたのも制憲議会でした。
マドゥロ政権下で、国民は食料や医薬品不足、今年は1000万%と予測されるほどのハイパーインフレに苦しんでいます。国連は、人口の1割近い300万人がすでに国外に脱出し、年内に500万人と予測しています。
マドゥロ氏は前政権以来の失政と国民生活の過酷な実態を認めず、国連などによる国際人道支援の受け入れも拒否しています。政権批判を容赦なく弾圧し、国連の調査によると一昨年の120人以上の犠牲者のうち、判明しているだけでも半数以上は治安当局の弾圧と政府支持派の暴力によるものでした。
移住者・難民の大規模な流出は近隣諸国の社会保障や治安、疫病の広がりの恐れなど多くの面で困難をもたらし、財政を圧迫しています。ベネズエラ危機は、ここに至って一層深刻な国際問題になっています。
弾圧も軍事介入も許さず
今後の情勢がどう展開するにせよ、マドゥロ政権は弾圧をただちに停止すべきです。反政府集会などの中で30人以上が犠牲になり、約800人が拘束されたといわれます。グアイド氏ら野党幹部への弾圧の恐れが指摘されています。
トランプ米大統領は今回の事態について、「すべての選択肢が机上にある」と述べました。一昨年8月にはベネズエラに対する「軍事介入の選択肢」を検討していると強調し、中南米諸国からいっせいに反発されました。
国際社会が一致して求めているのは、ベネズエラ国民による平和的な解決です。外国の軍事介入は絶対に許されません。