2019年1月18日(金)
米民主党 連邦最賃15ドル法案提出
“今こそ全国で”運動団体後押し
【ワシントン=遠藤誠二】先の中間選挙で下院で多数を奪還した米民主党は16日、連邦レベルでの最低賃金を15ドル(約1600円)に引き上げる法案を議会に提出しました。労働者のたたかいで、ニューヨーク州など地方レベルでは15ドルが実現するなど最賃引き上げの動きが広がっており、時給15ドルを目指す団体「ファイト・フォー15ダラーズ」は、「今こそ全国で15ドルを実現すべきだ」と後押ししています。
連邦最賃は、2007年以来、時給7ドル25セント(約780円)に据え置かれ、フルタイムで働いても「貧困から抜け出せない」と批判されてきました。民主党が提出した最賃引き上げ法案は、24年までに段階的に15ドルにするもの。チップで稼ぐ飲食店などの労働者も含む、全ての労働者に連邦最賃を保障しようとしています。
下院(定数435)では181の議員が、上院(同100)ではサンダース議員を筆頭に31の議員が共同提出者となりました。同法案は、下院では採択される見通しですが、共和党が多数派の上院では、困難が見込まれます。トランプ大統領も、連邦ではなく州レベルでの最賃引き上げを主張し、同法案が仮に議会を通過しても、署名しない考えです。
しかし、20年の大統領選挙を前に、連邦最賃を引き上げる機運が高まることは確実です。民間のシンクタンク「経済政策研究所」(EPI)は、全国規模で時給15ドル以上が実現すれば、4100万人の労働者が恩恵を受けるとの分析を公表しています。
全米50州中30州と首都ワシントンが、連邦を上回る最賃となっており、そのうち時給10ドル以上となるのは12州とワシントンです。ニューヨーク州では、すでに一部労働者が時給15ドルとなっており、21年までにすべての労働者が対象となります。
連邦議会では同日、民主党指導部をはじめ法案に賛同する議員が、法案提出の集会に出席。ペロシ下院議長は声明で、連邦最賃15ドルの実現は「勤勉な労働は、まともな賃金を受け取る、という国の基本理念である公正さを確約するものだ」と述べ、法制化の必要性を説きました。
サンダース上院議員は、「現行の最賃は窮乏に陥る賃金であり、15ドルに引き上げるべきだ」と強調しました。