2019年1月16日(水)
米ロサンゼルス 教職員30年ぶりスト
ため込んだ余剰金2000億円 賃上げ・人員増に回せ
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【ロサンゼルス=遠藤誠二】賃上げや大規模化したクラスの少人数化、公教育破壊阻止などの要求を掲げて、米西部カリフォルニア州ロサンゼルス市の教職員らが14日、ストライキを開始しました。30年ぶりとなるストには約3万2000人の組合員が参加、多くの保護者、生徒も支持してデモなどの行動に加わりました。
ロサンゼルス市の学区は、全米2番目の規模で、900の公立学校に約60万人の生徒が通います。ロサンゼルス教職員組合(UTLA)は、ロサンゼルス学区が19億ドル(約2000億円)もの余剰金をため込んできたと指摘。これを活用して、賃上げとともに、クラスの少人数化、養護教員やカウンセラー、図書館司書の増員、教育予算増を実施するよう要求しています。
また、チャーター・スクール(公的資金による民間運営の公立学校)への予算(毎年6億ドル〈約640億円〉)配分の廃止、生徒に過重な負担となっている多すぎる試験実施の中止も求めています。13日までの交渉では、教育委員会との妥結はなりませんでした。
ロサンゼルス教育委員長のオースティン・ボイトナー氏は、教育の経験を持たない投資家出身の人物です。UTLAは、同氏について、民間に公費を費やす一方で、公立校の縮小を図ろうとしていると批判しています。
UTLAのアレックス・カプートパール委員長は14日朝、市内北部のジョン・マーシャル高校で記者会見し、「最も裕福な国の最も裕福な州のロサンゼルスで、生徒1人当たりに使う教育予算は全米50州中43位だ」と指摘。一部の富裕層のためではなく生徒たちに予算を回すことを訴えました。
米国では昨年春から、ウェストバージニア、ケンタッキー、オクラホマ、アリゾナなど、州規模で教師が決起し、賃上げなどを勝ち取ってきました。
生徒や親も参加 議員連帯表明
ロサンゼルス市教職員のストに参加した各教員は14日、それぞれの学校で座り込み行動を開始しました。多くの生徒やその親も支援し、教員、保護者、生徒が協力し、教育改善の要求を当局に突き付けました。サンダース上院議員など進歩派議員もツイッターで連帯を表明しています。
市内北部のジョン・マーシャル高校では、午前7時から、大雨のなか「生徒のためのスト決行中」「未来のための教育を」「保護者は教師を支持する」などと書かれたプラカードを持つ、教員、保護者、生徒ら数百人が、校舎前でデモ行進を繰り広げました。通行する車からは、支持を表すクラクションが鳴り響きました。
同校に通う1年生のルーシー・コニーさんと母親のキャロリン・コニーさんもデモに参加。ルーシーさんは、「1クラス35~46人と大人数で、カウンセラーの数も圧倒的に少ない。20~25人の少人数クラスなどはロサンゼルスでは幼稚園でしか実現していません。授業には参加したいけど、この問題が解決するまで、学校には行きません」と断言しました。
「クラスのサイズが問題だ」と書かれたプラカードを上半身の前後に着けたキャロリンさんは、「学校に養護教員が週1回しか来ないケースがあります。信じられない。教員は、教師だけでなく、カウンセラー、養護教員の役割を担うことを余儀なくされています。こうしたことは変えなければいけない」と話しました。
ジョン・マーシャル高校近隣のミシェルトレーナ小学校でも、教員と保護者、児童数十人が、「教師のためにたたかう」と唱和し雨のなかデモ行進しました。近隣商店街の店先には「教師を支持する」と書かれたポスターが数カ所、張られていました。
数千人の教員、保護者は同日午前、都心部のロサンゼルス市役所前に集結。昨年来、教員ストを支援する象徴となった、赤いTシャツを着た参加者は「UTLA」と叫びながら、ロサンゼルス学区本部まで行進しました。