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2018年12月24日(月)

シリーズ検証 日米地位協定

在日米軍関係経費 初の8000億円台

膨らむ「辺野古」

表

 2018年度に日本政府が計上した在日米軍関係経費の総額が8022億円になり、初めて8000億円台に達したことが分かりました。昨年度を225億円上回り、4年連続で過去最高を更新(グラフ)。外務省が日本共産党の赤嶺政賢衆院議員に提出した資料をもとに本紙が計算したものです。

突出

 在日米軍の兵士・軍属(6万1324人、今年9月現在)1人あたりで約1308万円に達しており、米国の同盟国でも突出しています。こうした経費負担があるから、米国は国際情勢がどうなろうと日本に基地を置き続けるのです。

 在日米軍の活動経費のうち、日本側負担分を示す在日米軍関係経費の増大の要因は、米兵・軍属の労務費や光熱水料を負担する年間2000億円規模の「思いやり予算」やSACO(沖縄に関する特別行動委員会)経費に加え、沖縄県名護市辺野古での新基地建設などで米軍再編経費が拡大したことです。

写真

(写真)土砂の投入作業が強行された「N3」護岸付近=14日、沖縄県名護市の辺野古崎付近(小型無人機で撮影)

 日米地位協定24条では、日本側の米軍駐留経費負担を定めています。しかし、具体的に明記されているのは土地の賃料などに限られており、(1)思いやり予算(2)米軍再編経費(3)SACO経費は協定上、支払い義務はありません。18年度の在日米軍関係経費8022億円のうち、この3分野が4180億円と半分以上を占めています。

指摘

 辺野古新基地建設に伴う埋め立て工事について、防衛省は沖縄県に提出した資金計画書で約2300億円としていますが、沖縄県は総工費2兆5500億円に達すると指摘しています。米軍向けの支出はさらに膨れあがる危険が大きい。

「思いやり」いらない

第24条

解釈拡大、日本の負担が肥大

 在日米軍駐留経費の負担の在り方を規定する日米地位協定24条では、日本側の負担は施設・区域(基地や演習場)、土地の賃料や地主への補償と規定し、それ以外のすべての駐留経費は「日本国に負担をかけないで合衆国が負担する」としています。

限界

 当初の米軍駐留経費負担は、土地の賃料に加え、基地を抱える住民自治体への“迷惑料”とも言える基地周辺対策経費、基地交付金のみでした。しかし米側は、1970年代にベトナム戦争の泥沼化などで財政が悪化すると、同盟国に「責任分担」を要求。日本政府は要求を受け入れ、「思いやり予算」(金丸信防衛庁長官)と称して78年度以降、基地従業員の福利厚生費の負担を開始しました。その後、労務費の一部や米軍の家族住宅、娯楽施設、さらに戦闘機の格納庫などといった施設建設費を負担。地位協定の解釈を拡大していきました。

 こうした拡大解釈も限界に達し、87年度には「暫定的、特例的措置」として特別協定を締結。水光熱費や従業員の基本給、空母艦載機の訓練移転費にまで拡大していきました。

 特別協定は7回も延長され、事実上恒久化しています。2016年に更新された現行協定は、「思いやり予算」を16年度から20年度までの5年間で総額9465億円と、年2000億円規模を維持する内容になっています。

 78年度に始まり、40年を迎えた「思いやり予算」。現行協定までの期間で、累計の支出総額は7兆6317億円になる見通しです。

 さらに97年度からの「SACO(沖縄に関する日米特別行動委員会)経費」、2006年度からの在日米軍再編経費と、「沖縄の負担軽減」を口実とした基地建設・たらい回し費用が継ぎ足されてきました。

写真

絶賛

 こうした日本の米軍駐留経費負担は、世界でも突出しています。トランプ米政権は同盟国に米軍駐留経費の大幅な増額を求めていますが、昨年2月に来日したマティス国防長官は日本について「世界の手本になる」と絶賛しました。

 NATO(北大西洋条約機構)軍地位協定には、駐留経費負担に関する規定自体が存在しません。ドイツやイタリアでは、労務費、光熱水料、施設整備費は全て米側負担です。

 一方、米韓地位協定には、日本と同様に韓国側の経費負担義務があります。87年度に始まった日米の特別協定に続き、米韓も91年は米韓防衛費分担特別協定(SMA)を締結。日本が特別協定を締結したことが韓国側への圧力として作用した可能性があります。

 韓国の費用分担は年々拡大し、18年は9602億ウォン(約960億円)となっています。現行協定が12月末で期限切れになるのに伴い、新協定の締結交渉が行われましたが、トランプ政権は倍増を要求しているとの報道もあり、年内妥結に至りませんでした。

 韓国側の強い姿勢は、米国の要求に唯々諾々と従う日本とは異なります。また、在韓米軍はSMAで提供された資金に関する年次報告書を国会に提出することになっています。事実上の“つかみ金”となっている日本の支出とは大きく違っています。

写真

(写真)「思いやり予算」で建設された米軍の家族住宅=米軍キャンプ・キンザー(沖縄県浦添市)

表

地位協定24条ポイント

 ▼米軍の駐留経費は、次に規定するものを除き、日本に負担をかけないで米国が負担する。

 ▼日本は、すべての施設・区域ならびに路線権(空港・港湾や共同使用施設など)を米国に負担をかけないで提供し、施設・区域や路線権の所有者に補償を行う。

米軍関係経費・拡大の過程

 年度 拡大の内容

 1978 金丸信防衛庁長官が「思いやり」発言。基地従業員の福利厚生費の負担開始

   79~ 施設建設費の支出を開始

   87~ 特別協定を締結。基地従業員の基本給、米軍基地、住宅の水光熱料、訓練移転費などを負担。 

   97~ SACO経費の負担を開始

 2006~ 在日米軍再編経費の負担開始

   16 新協定締結。5年間で「思いやり予算」総額9465億円の負担を決定


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