2018年12月22日(土)
ウーバーまた敗訴 英控訴院
運転手は「労働者」
【ベルリン=伊藤寿庸】英国のイングランド・ウェールズ控訴院(高裁に相当)は19日、アプリを使ったタクシー事業を展開するウーバーの運転手は同社に雇用されている労働者であり、有給休暇や最低賃金の適用を受けるとする判決を出しました。雇用審判所の2度の判断を支持するもので、訴訟を支援する都市一般労組(GMB)は「ウーバーの組合員への早めのクリスマスプレゼントだ」(ローチ書記長)と歓迎しました。ウーバーは不服として最高裁に控訴します。
ウーバーは、運転手は乗客と直接契約を結んでいる「自営業者」であり、ウーバーは「仲介」しているだけだと主張。これに対し運転手は、われわれはウーバーからの支配を受ける労働者だとして、有給休暇、最低賃金の適用を求めました。雇用審判所は初審も二審も、運転手の主張を認め、ウーバーが控訴していました。
ウーバーは、雇用審判所の最初の判決後も運転手に未払い賃金を支払っていません。GMBの依頼で訴訟を進めた弁護士事務所によると、ロンドンのウーバーの運転手に対する未払い賃金相当分は1人当たり1万8900ポンド(286万円)に上るといいます。
解説
待機も労働時間
今回の判決により、この訴訟で労働者が3連勝です。アプリを使って顧客とサービス提供者とを結ぶビジネス全体に影響を及ぼします。
判決は、本質的な争点が、(1)ウーバーがタクシーサービスを顧客と契約して、それを運転手が実行するのか(2)運転手が独立自営業者として顧客を運び、ウーバーは両者の予約と支払いの仲介をするだけなのか―という点だと指摘。そのうえで、「契約の文面の上では後者((2))だが、それは(ウーバーと運転手の)関係の現実を反映しておらず、判例に基づき無視できる」として、雇用審判所の判断を支持しました。
雇用審判所は初審で、(1)運転手は、ウーバーに雇用される労働者である(2)運転手が領域(この場合ロンドン)内でアプリをオンにし、顧客の注文を受けている間は、労働しているとみなされる―と判断。控訴審も支持しました。
運転手がアプリをオンにしていても、顧客の注文に答えない権利があることから、顧客を運んでいる実働時間が労働時間だという主張については、「ウーバーは、運転手が注文を断る頻度が高すぎる場合に、その運転手のアプリを一定期間遮断する権利を持つ。このような状況下で、運転手は、アプリをオンにしている間、労働可能でなければならない積極的義務を課されており、『労働』に相当する」としています。
(ベルリン=伊藤寿庸)