2018年12月17日(月)
主張
学童保育の「基準」
放課後の安心へ責任を果たせ
共働き家庭などの小学生が過ごす学童保育(放課後児童クラブ)の職員配置数や資格の基準を、国が事実上撤廃する方針を打ち出したことに、地方議会で反対意見書が可決されるなど“基準を堅持すべきだ”の声が広がっています。
質の向上に反する撤廃
学童保育は2015年施行の「子ども・子育て支援法」で位置づけられ、児童福祉法に基づく省令で職員(指導員)の資格と配置について「従うべき基準」(国が定める最低基準)が定められました。
同基準では▽一つの学童保育の規模をおおむね40人以下を単位に指導員2人以上を配置する▽うち1人は「放課後児童支援員」という新基準で認定された有資格者―などとしています。ところがわずか3年で、この最小限の基準さえなくそうというのです。来年の通常国会で法改定する方向です。
「従うべき基準」は、学識経験者、自治体、学童指導員などさまざまな立場の関係者が、厚生労働省の社会保障審議会児童部会の専門委員会で議論を積み重ね、学童保育の「質の確保」「事業内容の向上」のために、不十分な点を残しながらも確認されたものです。
指導員2人配置は、子ども同士のいさかい、けが、災害など緊急時対応など安全・安心、質の確保の点から最低限の基準であり、すでに全国で実施されています。
指導員の資格は、それまで基準がなかっただけに、子どもに「全国的な一定水準の質」を保障する放課後児童支援員の資格を定めたのは前進です。資格取得の研修内容の改善を求める指摘もありますが、資格基準の撤廃・緩和は質の向上に背を向けるものです。
新たな資格の普及に向けても、40%の指導員が研修を受け資格取得するなど努力が始まっています。しかし、常勤が3割、多くが非常勤やパートという指導員の処遇や雇用の改善は進んでいません。
指導員の処遇改善事業制度を利用した東海地方のある民間学童クラブでは基本給が6万円上がるなど、改善が図られつつあります。一方、制度活用には自治体の財政負担が重く、実施自治体が2割程度という現状の打開が必要です。
放課後の子どもに楽しく安心して生活できる場を整備するのは自治体の責任です。7月の厚労省の専門委員会中間とりまとめでは、子どもとの安定的・継続的なかかわりにとっても「(指導員の)雇用に当たっては、長期的に安定した形態とする」ことを求めています。政府は、一部自治体から基準を満たす指導員確保が困難などの声が出ていることを基準撤廃の理由にしていますが、本末転倒です。
制度の抜本的な充実こそ
現在3万1000カ所の施設で121万人を超える子どもたちの豊かな成長を支え、魅力ある学童にするために、9万人の指導員が日々奮闘しています。
いま重要なのは、指導員の社会的地位を高め、処遇を改善することです。同時に、必要最低限を定めた国の省令基準が実施できるよう運営費補助をはじめ、学童保育関係予算の大幅な増額で財政保障をすることが不可欠です。
学童待機児や父母負担の軽減など課題は山積です。設備や運営などについては、いまだ「参酌(参考)基準」です。最低基準の撤廃でなく、制度の抜本的充実こそ国と自治体が果たすべき責任です。