2018年11月21日(水)
学童保育 基準廃止狙う
政府が方針 質低下の危険
安倍政権が、働く保護者に代わって小学生の放課後を守る学童保育(放課後児童クラブ)について、職員配置数や資格を定めた国の基準を事実上、廃止する方針を打ち出しました。子どもの安全確保や質の向上を願う保護者・職員らの運動で導入された全国一律の基準をなくすもので、切実な願いを踏みにじる暴挙です。19日に開かれた内閣府の「地方分権改革」有識者会議で了承されました。
学童保育では、厚生労働省が2015年度から▽1教室に「放課後児童支援員」を原則2人以上配置する▽同支援員は保育士や社会福祉士などの資格を持つとともに、都道府県知事の研修を修了する―という「従うべき基準」を設け、各市区町村に義務付けています。
政府は、職員確保に苦しむ地方からの「提案」を口実に、「従うべき基準」を、拘束力のない「参酌(参考に)すべき基準」に変更する方針を表明。市区町村が条例改定をおこなって職員数などを自由に決められるようになるため、放課後児童支援員の現行資格のない職員が1人で学童保育を担うことも可能になります。保護者や職員からは質の低下を懸念する声が出ています。
職員不足の問題では、国の基準導入以前から低賃金など労働環境の改善が求められていました。政府はその願いには正面から応えず、1教室1人の担当を可能にするなどで子どもの受け皿を拡大させる狙いです。12月に閣議決定し、来年の国会に関連法の改定案を提出する動きです。
命と安全を守れるのか
全国学童保育連絡協議会事務局長・高橋誠さんの話 「従うべき基準」は自治体に対して守るべきものとしての強制力が働きます。「参酌基準」は自治体による裁量が認められており、今回の方針が通ってしまうと、自治体の判断次第で、専門性のないおとなが1人で多くの子どもとかかわることも起こりえます。それで子どもの命と安全を守ることができるのでしょうか。子どもにとって安全・安心な場所を保障するためには、一人ひとりの子どもを理解し、専門性をもった指導員の複数配置が不可欠です。今回の方針は到底容認できるものではありません。「従うべき基準」を堅持するよう、国に対して、強く働きかけていきたいと考えています。