2018年11月13日(火)
マルクスの生命力から野党共闘まで
志位委員長、橋本「読売」特別編集委員と対談
ラジオ日本番組
11日放送のラジオ日本番組「政界キーパーソンに聞く」に日本共産党の志位和夫委員長が出演し、聞き手の橋本五郎・読売新聞特別編集委員と、マルクスの生命力から野党共闘まで多岐にわたるテーマで対談しました。
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志位氏「自主・独立の立場が激動乗り越え力を発揮」
橋本氏「一貫して変わらぬ姿勢は大切」
冒頭、10月28日に初開催された「JCP(日本共産党)サポーターまつり」が話題に。サポーターの要望にこたえ志位氏がまつり会場でショパンの「別れのワルツ」をピアノ演奏したのは「最近にない、ほっこりしたニュース」と語った橋本氏からは、「戦後の激動のなかで共産主義(を名乗る政党)があちこちで倒れていくなかで、(日本共産党が)ずっと長くやってきたのはなぜ」など党の歴史や理念に関する質問が次々。志位氏は「ソ連共産党に何でも従った党は、ソ連崩壊と一緒に衰退した」「日本共産党はソ連の干渉をはねのけ自主・独立の立場を貫き、日本の進むべき道は日本で決めると活動してきました。そのことが激動の波を乗り越えていまに力を発揮している」と述べました。
橋本氏は「民主主義は最終的には数なんですが、数以上に与えるものが私はあると思う。それは、一貫して変わらない姿勢。これはすごく大切だ」と、ぶれない日本共産党の姿勢を評価。志位氏は、戦前、日本共産党以外のすべての政党が戦争推進に協力したため戦後は名前を変えて出発せざるをえなかった歴史にふれ、「日本共産党は戦前、戦後、平和と民主主義、人権を守ってぶれずに頑張ってきました。国民の立場にしっかり立って、ぶれずに頑張ってきたことがいまの土台にあると思っています」と応じました。
橋本氏「マルクスは決して過去のものでない」
志位氏「人間の自由で全面的発展を求めたマルクス」
橋本氏の「『共産主義は崩壊した』『マルクスは過去のもの』というのに対し私は異議がありまして」という発言で、マルクスが話題になりました。
橋本 私はどちらかというと保守的なんですが、マルクスは決して過去のものではないと思っているんですね。いま一番の問題は格差の問題ですよね。
志位 そうですね。今年はマルクス生誕200年です。マルクスの母国ドイツでも、ヨーロッパでも、アメリカでも、マルクスが一つのブームになっていますよね。「マルクスは過去のもの」ではないどころか、いまの世界に生きていると思うんですよ。
いま橋本さんがおっしゃった格差と貧困の問題は、いまの資本主義体制のもとでは解決がつかない。いろいろ調べてみて私が興味深かったのは、OECD(経済協力開発機構)のほとんどすべての国で格差が広がっていることです。格差と貧困が広がっていくシステムという点では、資本主義のもとでは解決がつかない問題がある。それを解決していく道筋をマルクスは明らかにした。だからいま、そこにマルクスの注目が出ていると思うんですよ。
橋本 私は、共産主義と資本主義を超えた新たな原理が出てきてもいいのではないかという感じさえするんですよね。
志位 よくソ連とともに「共産主義が終わった」といわれるんだけれども、ソ連共産党が唱えていた理論は、マルクスの一番いいところをみんなつぶしちゃったんですね。マルクスが一番求めたのは人間の自由であり、個々人がその能力を自由に全面的に発展させることのできる社会です。労働時間をうんと短くして自由な時間を拡大する。ここに私たちの未来社会の一番の眼目があるんですが、この一番いいところがスターリンによってつぶされてしまった。そこを日本共産党は発掘し、綱領にその道をすえています。いよいよマルクスの生命力が今後発揮される時代がやってくると思っているんです。
橋本 私は、やっぱりマルクスの原点に戻ることが大事じゃないかと。
共産党の財源論
橋本氏「国民的な合意になるのか?」
志位氏「無理筋でない優遇課税の見直し」
外国人労働者受け入れ拡大のために新たな在留資格をつくる出入国管理法改定案。橋本氏は「単に労働者が不足しているから外国人を受け入れるのではなく、日本を開かれた国にするにはどうしたらいいかを議論しなければいけない」と政府の姿勢を問題にしました。
志位氏は「私たちは、秩序ある受け入れは必要だという立場です」と述べたうえで、現在日本で働いている128万人の外国人労働者に対する二重の人権侵害―(1)職場選択の自由や家族の帯同を認めないなど制度として人間らしい権利を認めない(2)労働基準法や最低賃金などの現行制度すら守られていない―を指摘。「この無権利状態をほったらかしにして、受け入れを拡大したら大変なことになります。外国人の無権利状態は、イコール日本人の労働者の無権利状態につながってきますから、きちんと権利を保障する制度にしないといけない」と強調。さらに、法案そのものも根幹部分を「政府に全部白紙委任状を与えるとなっており、法案の体をなさない」と批判しました。
また消費税増税問題で橋本氏は「社会保障にかかるお金をどこから調達してくるか。共産党は大企業、軍事費・防衛費からもってくるべきだと主張していますが、それは国民的な合意になっていきますか」と質問。志位氏は「私たちが提案しているのは、無理筋な話ではなく、まずやろうといっているのは大企業や富裕層に対する優遇課税(の見直し)なんですよ」と説明。研究開発減税など大企業に対する特別の優遇税制をただし、株取引で大もうけしている富裕層に対する証券課税を強化することで消費税2%増税分の5兆円の財源が生み出せることを示すと、「別に大企業に強い負担を求めるのではなく、優遇の部分(を見直そう)なんですね」と橋本氏。
橋本氏「自衛隊と9条とのギャップどう埋める?」
志位氏「9条という理想にむけて自衛隊のあり方を段階的に改革していく」
安倍首相が掲げる自衛隊明記の9条改憲に関し橋本氏は「国民の多くが、災害出動する自衛隊に感謝の気持ちを持ち、自衛隊を認めている。共産党は“自衛隊は憲法違反”という主張を変えていない。このギャップをどう埋めるのか。憲法を変えるか、自衛隊をなくすか二つに一つしかないのでは」とたずねました。
志位氏は「9条に自衛隊を明記することで、海外での武力の行使が無制限になってしまう。そういう自衛隊にしていいんですか、というのがいまの争点です」と強調したうえで、9条という理想に向かって段階的に自衛隊のあり方を改革していく日本共産党の考えを説明。「日本を取り巻く安全保障環境が本当に平和的に成熟し、国民の大多数が9条を完全実施しても大丈夫だという合意が成熟したもとで、初めて9条の完全実施に着手する。そういう段階的解決の方針を私たちは明らかにしています。そういうやり方が唯一の解決方法だと思っています」と述べました。
天皇の退位
「おことば」でなく政治の責任でとりくむことを求めた共産党
さらに橋本氏は、現天皇の退位を可能にした天皇退位特例法(2017年6月成立)の議論に関し、「最終的には天皇陛下ご自身の発意に基づいてああいう形(退位)で決まっていくのは象徴天皇制のあり方からいって、ちょっと変ではないか」と疑問を投げかけました。志位氏は次のように答えました。
志位 (天皇の発意をうけて進めるというやり方に)共産党としては異議ありといったんです。
今回の退位の問題について私たちは、(天皇の)「おことば」があった時点で、一人の方がどんなに高齢になっても同じことを続けることを求めるという現行のあり方の改革が必要だと表明しました。「おことば」があったからではなく、政治の責任でやる必要があると最初から強調したんですね。
しかし最終的な(天皇退位特例)法案には、「おことばを重く受け止め…」という文言が入ったんです。そうしますと、橋本さんがおっしゃったように、「おことば」があったから動いたということになります。これは憲法4条「天皇は…国政に関する権能を有しない」に反することをやったということになってしまう。私たちは「『おことば』を受け止めて行ったということになると憲法違反になる。削除すべきだ」と(国会審議の中で)言ったんです。
橋本氏は「憲法を守るという意味でも、これはきちんとすべきだと思う」と述べました。
野党間の政策
国政の大きな方向性では共有、真剣に話し合っていけば共闘ができる
来年の統一地方選・参院選の争点を問うなかで橋本氏は「『安倍1強』というが、他の野党がもうちょっときっちりすればそんなことは乗り越えられると思うんですが」と述べました。
志位氏は「大きな争点は、憲法、消費税、原発、沖縄。その太いところでいまの政治のあり方の転換を訴えてたたかいたい」と述べ、日本共産党躍進とともに、「市民と野党の共闘」を成功させ、32ある参院選1人区で野党統一候補を実現して自民党に勝つ決意を表明しました。
野党間の政策の一致点を問われて志位氏は、(1)憲法違反の安保法制の廃止、立憲主義の回復(2)安倍政権のもとでの憲法改定は認めない(3)来年10月からの消費税10%増税反対―ではだいたい一致していると指摘。「原発ゼロ・自然エネルギーの方向に転換する法案も野党共同で国会に提出しました。沖縄の問題も、(県知事選で)玉城デニーさんを野党そろって応援しましたから、これも一致が出てきた。ですから、かなり国政の大きなところでの方向性の一致は共有してきている。真剣に話し合っていけば私は共闘ができる。ぜひそういう態勢をつくりたい」と強調しました。