2018年10月5日(金)
ドイツ再統一記念日
東西格差 今も「壁」
企業買収 人材は流出
【ベルリン=伊藤寿庸】1990年に東西ドイツが再統一した記念日の3日、ベルリンでシュタインマイヤー大統領、メルケル首相など政府要人が参加した公式行事が行われました。ブランデンブルク門周辺では、コンサートや出店で1日から3日間続いた祝賀行事に市民が詰めかけました。
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3日発表された東西統一に関する政府の年次報告は、旧東独部の生活水準が旧西独部に接近してきたと指摘。しかし賃金水準や経済力、大企業の本社がないことなどで東独部が今も遅れをとっていることを認め、「独裁や(再統一後の)経済的社会的混乱がもたらした傷痕は今もうずいている」と指摘しました。
それによると2017年の経済成長率は東独部で1・9%(西独部は2・3%)。1人当たりの国内総生産(GDP)は東独部が西独部の73・2%で、10年間で4・2ポイント接近したとし、東西の経済レベルの接近が極めて遅いことを認めました。
東西再統一以来、東独にあった国有企業などは多くが破たんするか、西独企業に買収されて閉鎖。高学歴や技術を持った人々が西側に流出しました。今も人口減少が続き、高齢化が進んでいます。
報告書によると、20~64歳の人口は59%で、65歳以上の高齢者が4分の1に達しています。東独部でもベルリン、ライプチヒ、ドレスデンなどの大都市と農村部との経済格差も拡大しています。
「ベルリンの壁」が東西を分断していた期間と、東西再統一からの期間が同じ28年。現状について左翼党のキッピング共同党首は、東西格差という「不公正の壁がある」と指摘し、現政権には東独部に対する視点がないと批判しました。
他方で、「新ドイツ人組織」など約20の移民系市民団体は、ドイツは東西ドイツ人だけで構成されているのではないとして、移民系の市民に対する差別にも目を向けることを求める声明を発表しました。
また例年この日に非イスラム教徒に公開しているモスクは、昨年の1000以上から今年は900程度に減少。東独部での極右デモなど移民・イスラム教徒の排斥が強まる中で、ドイツ・イスラム教徒中央評議会は「攻撃の恐れや社会の連帯の欠如」を理由にあげました。