2018年9月22日(土)
主張
南北首脳会談
平和と非核化への前進を期待
韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領と北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)国務委員長が18日から20日まで行った南北首脳会談は、「9月平壌共同宣言」で「朝鮮半島全地域での実質的な戦争脅威の除去」「朝鮮半島を核兵器と核脅威がない平和の地にしていく」ことに合意し、北朝鮮が取る追加の非核化措置を明記しました。さらに南北間の「軍事分野合意書」を締結し、「一切の敵対行為を全面中止」して、「いかなる場合にも武力を使用」しないことを確約しました。平和と非核化を前進させ、膠着(こうちゃく)状態に陥っていた米朝交渉を再開し、促進する糸口をつかんだという点で、今後の進展が期待されます。
米朝の膠着打開に糸口
文大統領と金委員長との首脳会談は軍事境界線がある板門店で開催した4月27日、5月26日に続いて、今回が3回目です。文大統領が平壌を訪問したのは初めてのことです。
「9月平壌共同宣言」で、北朝鮮が東倉里のミサイルエンジン試験場とミサイル発射台を「関係国の専門家の立ち会いの下で、まず永久的に廃棄」することに加えて、米国による「相応措置」を条件にしつつも「寧辺核施設の永久的廃棄」の用意を表明したことは、大きな意味があります。7月初めのポンペオ米国務長官の訪朝以後、停滞状況にあった米朝交渉を再開し、前に進めていくきっかけとなることは明らかです。
ポンペオ長官は南北首脳会談の結果を受けて発表した声明で、「金委員長の決断を歓迎する」と評価した上で、米朝交渉の再開を表明し、「北朝鮮の速やかな非核化を通じて、米朝関係を転換させ、永続的で安定した平和体制を朝鮮半島に築くための交渉開始となるだろう」としています。
もちろん、北朝鮮が今回表明した措置は初歩的なものであり、完全な非核化のためには全ての核施設、製造済みの核兵器、弾道ミサイルの廃棄など、取るべき措置はたくさん残されています。同時に、6月12日のシンガポールにおける米朝首脳会談で、金委員長とトランプ米大統領が署名した米朝共同声明が「両国間の何十年にもわたる緊張状態や敵対関係を克服」することや、「相互の信頼醸成によって朝鮮半島の非核化を促進できる」と明記しているように、米国側も北朝鮮に信頼を与えることのできる相応の措置を同時に取っていく必要があります。
米朝協議が再開されれば、完全な非核化のために北朝鮮が取るべき措置とその順序、それに対して米国側が取るべき相応の措置と、その順序について話し合われることになります。
その具体的な案について、文大統領は訪米し、24日のトランプ大統領との会談で、金委員長と論議した内容を伝えるとしています。平和定着と非核化に向けた首脳外交が再び活発化しています。
二度と戦争を起こさない
南北間の4月の「板門店宣言」と今回の「9月平壌共同宣言」、6月の「米朝共同声明」はいずれも、朝鮮半島で二度と戦争を起こさないという首脳レベルの意志が基礎になっています。
朝鮮半島の平和定着と非核化は、北東アジアの平和と繁栄にとっても不可欠です。平和と非核化のプロセスを後押しする外交こそが、日本政府にも強く求められています。