2018年9月9日(日)
スペイン 緊縮転換へ
来年度予算 政府とポデモスが一致
核兵器禁止条約署名も
スペインのサンチェス首相(社会労働党書記長)と左派政党ポデモスのイグレシアス書記長が6日、会談を行い、ラホイ前政権まで続いた緊縮政策の転換を具体化する来年度予算編成方針で一致しました。合意内容は教育予算増額、付加価値税(日本の消費税に相当)の軽減から核兵器禁止条約署名まで多岐にわたるもの。国民向けの予算編成に道を開く動きとして、主要労組からも歓迎の声が上がっています。
(菅原啓)
報道によると、今回の会談結果で最も具体的な内容となったのは、前政権下で切り詰められた教育関係。▽少人数学級の実現▽大学授業料の引き下げ▽奨学金増額―などが盛り込まれました。ポデモス側は全生徒への学用品無償化を提案しましたが、最終的には所得制限付きにとどまったと報じられています。
税制では、自営業者への減税、生活必需品の付加価値税軽減で合意。ポデモス側は、銀行増税などを主張していますが、大企業への増税の方向性については一致したものの、具体策は今後の協議に委ねられました。イグレシアス氏は、「望んでいた通りではないが、前進だ」と評価しました。
外交分野では、核兵器禁止条約への署名を明記。米国との関係から条約に否定的だった前政権の方針を変更するものです。パレスチナの国家承認を検討することも合意しました。
サンチェス首相は会談後、「福祉国家の再建を開始する社会的な予算を11月に提示するため、われわれは良い方向に向かっている」と述べています。
全国労組センターの一つ、労働者委員会のソルド書記長は7日、国会審議で中核となる二つの左派政党の立場を「歓迎する」との談話を発表しました。
スペインでは下院(定数350)が6月、汚職事件をめぐりラホイ前首相に対する不信任案を可決し、サンチェス氏が首相となりましたが、与党は社会労働党のみで84議席。予算編成にはポデモス(67議席)との連携が必要ですが、政策の違いから連携は困難とみられてきました。両党だけではまだ過半数に届かないものの、今回の合意は地方・少数政党との共同にも影響を与えると期待されています。
ポデモス スペインで緊縮政策に反対する運動から2014年に生まれた左派政党。「ポデモス」はスペイン語で「私たちはできる」の意味。16年の総選挙では共産党を中心とした選挙連合・統一左翼と連携し「ウニドス・ポデモス」として第3党を確保。議会勢力は連携政党を含め下院(定数350)で67、上院(同266)で20議席。