2018年8月22日(水)
比大統領、中国に苦言
南シナ海 自国軍機への警告多発で
【ハノイ=井上歩】南シナ海の南沙(スプラトリー)諸島周辺で人工島建設や軍事拠点化を進める中国が、周辺を飛行するフィリピン軍機に対して、威圧的な警告を発していたことが明らかになり、中国との対立を避けてきたドゥテルテ大統領が苦言を述べる事態になっています。
英BBCは今月、南シナ海上空でフィリピン軍機に対する中国側の無線通信を傍受した映像を公開。このなかで中国側は「フィリピン軍機、再度警告する。ただちに立ち去れ。さもなくば何が起きてもそちらの責任だ」と語気荒く述べていました。
フィリピン国軍のガルベス参謀総長は13日、こうした警告は「ほぼ毎日ある」と認め、「わが軍の操縦士や兵士は自国領空を定期飛行しているだけ」であり、正当な活動として継続しているとの立場を語りました。
米メディアは先月、フィリピン軍機が昨年7~12月の間に中国から少なくとも46回の無線警告を受けていたとするフィリピン政府報告書の存在を報道しました。
ドゥテルテ大統領は17日、中国の行動について、「わが国に戦争する用意がないことを私は(中国側に)伝えた。なのに、なぜあなた方はひどい言葉を使うのか?」と苦言を呈しました。
ドゥテルテ氏はこの3日前にも威圧的な無線警告に関して「中国は振る舞いを抑えてほしい」「中国とはけんかをしたくない」と語っていました。
南シナ海では5月にフィリピンの補給活動が、中国海軍の「嫌がらせ」を受ける事件も発生。世論調査によると、南シナ海問題で自国の立場を強く主張するべきだとの世論がフィリピン国内で強まっています。
ドゥテルテ政権の南シナ海政策を批判してきたデルロサリオ前外相は17日、「南シナ海での中国の攻撃的で不法な振る舞いについて発言したドゥテルテ大統領をたたえたい」と発言。2016年の常設仲裁裁判所判決など国際法やルールの順守をフィリピンが一体となって求めていくべきだと訴えました。
ロイター通信によると、中国外務省は南沙諸島は中国領だとの主張を述べたうえで、南沙諸島の岩礁の「周辺空域、海域に故意に近づく航空機や船舶に対して、中国は必要な措置をとる権利がある」と同通信に回答しています。