2018年7月18日(水)
主張
パー券収入で疑惑
大臣経験者として見過ごせぬ
衆議院の議院運営委員長で、安倍晋三政権で国家公安委員長など閣僚を歴任してきた古屋圭司氏が、政治資金集めのパーティー券代を過少に申告していた疑惑が一部報道で明らかになりました。古屋氏は記者団に「ほとんど差がない」などとごまかしますが、事実なら政治家の責任が問われる大問題です。古屋氏は首相の側近の一人です。安倍政権下で相次ぐ「森友」や「加計」問題も解明が尽くされていない中で、曖昧にできません。議院運営委員長は国会の要職の一つです。本人はもちろん、政権も説明責任を果たし、疑惑を解明すべきです。
申告は収入の半分程度?
一部報道(「朝日」17日付)で明らかにされた古屋氏のパーティー収入をめぐる疑惑は、同氏の事務所がノートにつけて管理していたパーティー収入と、総務相に提出した政治資金収支報告書で申告した収入を比べ、申告額が「半分程度」にしかならない差があるというものです。古屋氏が代表を務める資金管理団体「政圭会」が2016年7月25日に開いたパーティー「政経フォーラム」について、同紙が事務所のノートを入手、関係者から「パーティー券の販売実態を記した事実上の裏帳簿」との説明を受けたといいます。
ノートの記載によれば、311の企業や団体などに計800枚のパーティー券の購入を依頼し、218企業・団体などから計594枚、1188万円の入金があったと読み取れるとしています。ところが政治資金収支報告書に記されたこのパーティーの収入は、642万円で、約半分です。
古屋氏は報道を受け記者団に、「ほとんど差がない」と言いましたが、報道が事実なら大きな差があります。曖昧な説明で済ませられる話ではありません。
政治家が政治資金集めで開くパーティー券代は、政党にしか認められていない企業・団体献金を、政治家個人が事実上受け取れるようにするために、形を変えた献金として行われているものです。企業・団体献金の場合年間5万円超はすべて公開で、国や自治体から補助金を受けている企業や外国法人などには献金が規制されるのに、パーティー券代は1回20万円を超えなければ公開されず、年間何回もパーティーが開けるなど、献金の“抜け穴”です。一昨年(16年)の総務相所管の政治資金収支報告書では、資金集めパーティー収入が政党や政治家を含め合計85億3000万円にも上っています。
それでも政党や政治家の政治活動が「国民の不断の監視と批判の下に行われるようにする」(政治資金規正法)という政治資金の公開原則に照らして、事実を偽る報告は重大な犯罪行為で、虚偽記載は「5年以下の禁錮、100万円以下の罰金」となっています。国家公安委員長などを務めた古屋氏がそうした原則を知らないはずはなく、まともに説明せず、ごまかすのは極めて悪質です。
豪雨対策と疑惑の解明を
資金集めパーティーの実態がここまでリアルに明らかになったのはめったに例がありません。徹底解明が不可欠です。
古屋氏が重要な役職者を務める延長国会はいよいよ大詰めです。豪雨対策に全力を尽くすとともに、悪法の推進ではなく、疑惑の解明に役割を果たすべきです。