2018年7月16日(月)
NHK日曜討論
山下副委員長の発言
日本共産党の山下芳生副委員長は15日のNHK「日曜討論」で、西日本を中心とした豪雨災害の被災者支援や被災地の復旧と、22日に会期末を迎える最終盤国会でのカジノ実施法案や自民党の参院選挙制度改定案への対応について、各党の代表者と議論しました。
西日本豪雨災害
自治体任せやめ 国が知恵と力を
西日本豪雨災害に対して政治は何をすべきかとの議論で山下氏は、政治の最優先課題は救命・救助、被災者支援、復興だと指摘したうえで、「被災者の実態と願いにとことん心を寄せて、前例にとらわれずに必要な支援をやりぬく姿勢が大事だ」と述べ、▽避難先生活環境の整備▽岩や土砂の除去▽住宅の応急修理支援を提起しました。
山下氏は、洗濯場やシャワー、高齢者が使いやすい洋式の仮設トイレ、適温食の提供、福祉避難所の設置と介助員の配置などができるとする、内閣府の避難所における良好な生活環境の確保に向けた通知を示し、「これらを避難所や自宅、親せき、知人宅などで避難している全ての方々に実施する必要がある」と提案しました。
個人宅であっても自力ではできない土砂などの除去の支援の重要性も訴え、水周りやトイレなど住宅の応急修理を国として支援して自宅に住み続けられるようにすることで、地域の復興・再建も早くなると強調しました。
山下氏は、これらは災害救助法の活用でできることだとし、「自治体任せにせず、政府としてどこがネックなのかを把握し、知恵と力を尽くして突破していく必要がある。与党からもぜひ政府に提起していただきたい」と求めました。
被害拡大どう防ぐ
危険箇所点検し住民と結果共有
さらに山下氏は、被害の拡大をどう防ぐかという視点から3点を提起しました。
1点目は、危険箇所の緊急点検です。山下氏は、土砂災害やがけ崩れ、河川やため池の決壊といった危険地域がどこにあるか、ブロック塀などの危険箇所がどこにあるのかを早急に点険する必要があると強調。大阪府北部地震でのブロック塀の倒壊事故を受けた学校のブロック塀の点検とともに一気に進めるべきだと訴えました。
2点目は、この点検結果を住民と共有化することです。山下氏は、地域の危険箇所やどういった工事が必要かといった情報を住民と共有すれば、対策も住民監視のもとで進み、災害の際の迅速な避難にもつながると指摘しました。
3点目として、公共事業のあり方を抜本的に変えることを挙げた山下氏。安倍政権になってから1件当たり10億円以上の大型公共事業の割合が17%から25%に、金額にして1・5兆円も増えたことを示しました。巨額の費用を投じるリニア中央新幹線の建設や東京外環道トンネル工事が、防災に効果があり、災害時に役に立つのかと疑問を呈し、「防災・減災対策は生活道路や上下水道、学校など、より住民に密着した事業を優先すべきだ。木を育て、山を守るといったダムに頼らない治水も大事になる」と述べました。
被災者支援・復旧
生活再建支援法改正案審議こそ
野党は、西日本豪雨が発生した5日夜に安倍晋三首相や閣僚、自民党議員が宴会に興じて災害対策の初動が遅れたことを「最も感覚が敏感でなければいけない方たちが機能しなかった」(立憲民主党の蓮舫副代表)、「地域によりそっているとはいえない」(国民民主党の舟山康江参院国対委員長)などと批判。そのうえで二次被害対策、財源案などさまざまな被災者支援、復旧対策案を提起しました。
山下氏は、「これから被災者にとって壊れた住宅の再建が大きな課題になる」と述べ、6野党・会派が被災者生活再建支援法の改正案を国会に提出していることを紹介しました。支援金の上限を300万円から500万円に引き上げることや、支給の範囲を現行の全壊世帯から半壊世帯へ拡充することなどの法案内容を示し、「この法案を審議して成立させることが、政治が被災者を全力で支援する、応援するというメッセージになる」と語り、自民・公明両党に法案の審議と成立を呼びかけました。
他の野党代表も「与党も野党も反対する法案ではない。カジノ法案よりも支援法の審議を」(蓮舫氏)、「早急に改正して、希望をみなさんに持っていただけるように」(自由党の森ゆうこ幹事長代行)、「改正を今国会でやり、みんなを勇気づけること」(社民党の福島瑞穂副党首)などと、そろって被災者生活再建支援法改正案の審議を最優先し、成立を目指すよう訴えました。
自民党の愛知治郎参院議員副会長は「防災対策というのは一つの政策で全てが解決できるわけではない。現実的にどのようなことができるか、国会の日程等も含めてさまざまな角度から検討していきたい」と述べ、改正案には言及しませんでした。
カジノ実施法案
業者パー券購入3氏国会招致を
番組後半は、最終盤国会でのカジノ実施法案や、自民党が参院の政治倫理・選挙制度特別委員会で可決を強行した参院選挙制度改定案について議論になりました。
野党は、こうした法案の審議をやめ、災害対応を最優先すべきだと求めました。これに対し、愛知氏は、「さまざまな課題が国内外に山積している。災害が起こったからといって他の課題をまったく無視していいわけではない」と述べ、両法案の今国会での成立を強行する姿勢を崩しませんでした。
カジノ実施法案について、山下氏は、米国の大手カジノ業者の関係者から自民党議員らが政治資金パーティー券の購入を受けていたとの週刊誌報道を受け、法案の立法事実に重大な疑義が生じていると指摘。西村康稔官房副長官、細田博之憲法改正推進本部長、岩屋毅カジノプロジェクトチーム座長といったカジノ実施法案の大本となったカジノ解禁推進法の提案者が購入を受けていたと指摘し「カジノ解禁で利益を得る企業からお金をもらい、そのための法案を強行したのではないか」と告発。法案審議の前提として、西村、細田、岩屋の3氏の国会への参考人招致を求めました。
愛知氏は「これはIR(統合型リゾート)法案だ」との言い訳に終始しました。
これに対し山下氏は、「IRの中心はカジノ。カジノは人のお金を巻き上げるだけで、経済効果を生み出すしろものではない」と指摘。雇用が増えるとの口実についても、「その何倍もの人生が壊される」と反論しました。また、入場回数「制限」を週3回としていることについても、「週3日も入れば十分な依存症だ。カジノをやめることが依存症を増やさない一番の対策だ」と主張しました。
参院選挙制度
改定案強行やめ各派協議の場へ
参院選挙制度改定案については日本維新の会も含めて野党代表はそろって「党利党略だ」「横暴極まりない」などと厳しく批判。愛知氏は「自民党を利するということは決してない」などと苦しい言い訳に終始しました。
山下氏は、「選挙制度で何より求められているのは投票価値の平等、多様な民意が正確に議席に反映されることだ」と強調し、参院選挙制度をめぐる2014年11月26日の最高裁判決は、都道府県単位で各選挙区定数を配分する仕組みを見直すことで1票の格差の是正をするという抜本改革を求めたと指摘しました。
そのうえで改定案は、合区で立候補できない自民党議員・候補者を救済するため、「非拘束名簿式」の比例代表選挙の一部に政党が候補者名簿に順位をつける「拘束名簿式」を特定枠として導入するもので抜本改革に値しないと強調しました。
山下氏は「新聞各紙も参議院の私物化に等しい、露骨なお手盛り、裏口入学だと批判し、国民からも批判が起こっている。主権者国民から理解が得られていない選挙制度の改変を自民党の思惑だけで数の力で変えたら政治そのものへの不信感が広がり、議会制民主主義が壊れてしまう」と述べ、改定案の強行はやめ、参院の各派協議に差し戻すよう求めました。
これに対し、愛知氏は「来年の参院選で実施するためには、今国会での法制化がどうしても必要だ」と述べ、会期内成立に固執しました。