2018年7月2日(月)
公的医療守れ 英4万人
緊縮で病院閉鎖 首相に抗議
国民保健設立70年
【ブリュッセル=伊藤寿庸】英国の国民保健サービス(NHS)の設立から70年にあたり、予算削減を進める保守党の緊縮政策から世界に誇る公的医療を守ろうと6月30日、ロンドンで約4万人が集会とデモを行いました。
NHSは、1948年に英国で創設された、窓口負担無料の国営の医療制度。第2次世界大戦で大きな破壊を受けた国民に、貧富の格差で受ける医療が差別されることのないように、資本主義国で初の包括的な保健医療を提供し、新しい社会の到来として歓迎されました。
この日のデモでは、「NHSの70歳の誕生日おめでとう」のプラカードとともに、「福祉でなく戦費を削れ」「NHSを救え」などの要求があふれました。首相官邸前では、予算削減を続けてきたメイ首相に対し、「恥を知れ」と唱和して抗議。
保守党政権の予算削減のあおりで、各地の病院が閉鎖に追い込まれています。賃上げ抑制が続き、スタッフは慢性的に不足。医者や看護師は労働強化でへとへととなり、患者の安全が脅かされているとの批判が上がっています。近年は、感染症などの流行で患者が急増する冬には、救急患者が廊下で何時間も待たされる非常事態が繰り返されています。
集会では、NHSに命を救われた元患者や、病院の民営化に反対しストを行っている労働者などが発言しました。労働党のコービン党首も演説し、「保守党は大企業や富裕層に減税を行ってきた。彼らにNHSに出すお金はないといわせてはならない」と批判。過去7年間にベッド数が1割削減されたり、一部の看護師が、無料で食料を提供する貧困層向けの「フードバンク」を利用しなければ生活できなくなっている事実をあげて、「NHSを守ることは、基本的な人間的価値と人権を守ることだ」と述べました。