2018年7月1日(日)
主張
閣議決定から4年
口実失う「戦争する国」づくり
安倍晋三政権が、憲法の平和主義と立憲主義を破壊し、集団的自衛権の行使を認める閣議決定を強行して4年がたちました。この閣議決定は、集団的自衛権の行使は憲法上許されないとしてきた歴代政権の見解を百八十度覆し、自衛隊の海外での武力行使を可能にした安保法制=戦争法へと具体化されました。しかし、その最大の口実とされてきた北朝鮮の「脅威」は、米朝首脳会談など劇的に展開する平和のプロセスの中で根拠を失いつつあります。安倍政権による「戦争する国」づくりをやめさせることは、日本と北東アジアの平和と安定にとって不可欠です。
安保法制の危険あらわに
安倍政権は4年前の2014年7月1日の閣議決定で、▽米国など他国に対する武力攻撃を実力で阻止する集団的自衛権の行使▽地理的制約なく米軍の艦船や航空機などを防護するための武器使用▽「戦闘地域」での米軍などへの軍事支援の拡大▽内戦などが事実上続く地域での「駆け付け警護」や治安活動―を認め、憲法9条を踏みにじる海外での武力行使に道を開きました。
安倍政権はこの決定に基づき安保法制=戦争法の法案づくりを進め、空前の規模に発展した国民の反対運動や世論を無視して15年9月19日に成立を強行しました。
安保法制の危険性は、16年3月29日に施行された後、直ちにあらわになりました。
南スーダンPKO(国連平和維持活動)に派兵されていた陸上自衛隊部隊は同年11月、安保法制に基づいて「駆け付け警護」などの新任務を付与されました。しかし、後に防衛省・自衛隊ぐるみの隠蔽(いんぺい)が明らかになる陸自派兵部隊の「日報」が首都ジュバでの大規模な「戦闘」の発生(同年7月)を明記していたように、停戦合意などPKO参加の前提となる「5原則」は完全に崩れていました。陸自派兵部隊が「駆け付け警護」を実際に行っていれば、自衛隊員が戦闘で「殺し、殺される」事態が現実になる恐れがありました。
安保法制の危険性は、北朝鮮による核実験・ミサイル発射をめぐる安倍政権の対応でも浮き彫りになりました。
安倍政権は、かたくなな「対話否定」論に立って、「全ての選択肢がテーブルの上にあるという米国政府の立場を支持する」と表明し、米国の先制的な武力行使を公然と支持し、「米艦防護」など安保法制を発動して日米共同演習をエスカレートさせ、危機をあおりました。万一、米朝間で軍事衝突が起こり、戦争に発展すれば、日本は安保法制に基づき全面的に参戦することになりかねませんでした。
安倍政権は「戦争する国」づくりのため、米トランプ政権の要求に応えた大軍拡など安保法制の発動態勢を強化するだけでなく、海外での無制限の武力行使に道を開く憲法9条改定も狙っています。
平和のプロセス成功こそ
6月12日の米朝首脳会談で合意した朝鮮半島の非核化と平和体制構築に向けたプロセスが成功すれば、安倍政権の「戦争する国」づくりの大きなよりどころはなくなることになります。
安保法制=戦争法の廃止、集団的自衛権行使容認の閣議決定の撤回とともに、平和を希求し、核兵器のない世界を求める世論と運動を発展させることが必要です。