しんぶん赤旗

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日本共産党

2018年6月10日(日)

迫る米朝首脳会談

非核化と平和体制構築 一体的に

 「朝鮮半島の完全な非核化」と「年内の朝鮮戦争終結」を宣言し、歴史的な成功をおさめた南北首脳会談(4月27日)から1カ月半。1950~53年の朝鮮戦争の「休戦状態」が現在も続いている米国と北朝鮮の両国首脳による史上初の会談が12日、シンガポールで開かれます。朝鮮半島問題の対話による平和的解決の歴史的なチャンスです。会談が成功をおさめれば、敵対してきた両国関係を根本から変えるだけでなく、地域の情勢が一変する「世界史の転換点」(日本共産党の志位和夫委員長)となります。


最大の焦点

 米朝首脳会談の最大の焦点は朝鮮半島の非核化です。しかし一方的に非核化を求めるだけでは、前進は望めません。

 実現のためには、朝鮮戦争以来続いている戦争状態に終止符を打ち、南北、米朝、日朝の緊張緩和・関係改善・国交正常化を図り、北朝鮮に「核兵器がなくても安全だ」と感じさせるような環境づくり―すなわち地域の平和体制を構築することがどうしても必要です。

 北朝鮮の非核化と平和体制の課題で、何が焦点になるのでしょうか。

 長年の懸案である北朝鮮の非核化について、トランプ米大統領は1日、金(キム)英哲(ヨンチョル)朝鮮労働党副委員長との会談後、記者団に「私も彼らも望んでいる」と述べ、非核化の意志は共有していることを強調しました。

 4月の南北首脳会談の「板門店宣言」は「朝鮮半島の完全な非核化」について、両国が「責任と役割を果たす」とし、ともに「国際社会の支持と協力のために積極的に努力することにした」と表明。韓国側は北朝鮮に「非核化の意志をさまざまな経路で確認した」と明らかにしました。

 平和体制の問題はどうか。トランプ氏は7日の日米首脳会談後の共同会見で、休戦状態にある朝鮮戦争の終結合意に調印する可能性があると明確に述べました。先の金英哲氏との会談後には「戦争が終結すれば、われわれは北朝鮮の安全についても保証することになり、再び戦争が始まることはない」と述べています。

 「板門店宣言」は「朝鮮半島の恒久的で堅固な平和体制構築のために積極的に協力していくことにした」と確認しました。

 北朝鮮はこれまでも、北朝鮮に対する軍事的脅威が解消され、体制の安全が保証されれば、核を保有する理由はないという考えを表明しています。

 さらに、今回の首脳会談は米朝関係改善の機会ともなります。ポンペオ米国務長官は金英哲氏との会談後、「首脳会談は平和と繁栄、安全の米朝新時代の歴史的幕開け」と述べています。

実現方法は

 非核化と平和体制の問題で合意ができた場合、それをどのように実現するかがもう一つの焦点です。

 5月7、8日、金(キム)正恩(ジョンウン)国務委員長が中国・大連を訪問し、中国の習近平国家主席と会談、直後には米中首脳の電話会談が行われました。

 習氏は「段階的解決」や「北朝鮮の安全保障上の懸念を考慮」することを米側に要請。トランプ氏は「朝鮮半島問題での中国の立場を重視する」と述べ、「中国が重要な役割を発揮している」と応じました。

 米政権内ではポンペオ氏が、非核化に応じるなら安全保証や経済発展を提供すると表明する一方、ボルトン大統領補佐官は完全な非核化まで見返りは一切ないとする強硬論を主張しています。

 北朝鮮側は核実験や弾道ミサイル発射を中止し、核実験場の廃棄の様子を外国メディアにも公開するなど、非核化に前向きな姿勢を示す一方、ボルトン氏らの強硬論には反発してきました。

 トランプ氏はすでに首脳会談が「プロセスの始まり」と述べ、「時間をかけて構わない」と北朝鮮側にも伝えています。非核化の具体的な手順については今後の協議に委ねる方向で、そのために首脳会談でどのような合意が得られるのかが注目されます。

日本に求められるものは

 そのほか、北朝鮮による日本人拉致問題についてもトランプ氏は7日の日米首脳会談後の共同会見で、取り上げる旨、改めて表明しました。

 日本は2002年に北朝鮮と「日朝平壌宣言」を結んでいます。

 これに基づき、核・ミサイル、拉致、過去の清算といった諸懸案を包括的に解決し、国交正常化を目指す、主体的な外交が求められています。それは、今の朝鮮半島の平和の流れも強めることは間違いありません。


対話による平和解決へ行動してきた日本共産党

写真

(写真)安倍晋三首相(左端)と会談する(右へ)志位和夫委員長、小池晃書記局長=4月9日、国会内

 今回の米朝首脳会談は朝鮮半島の非核化と北東アジア地域の平和体制構築に向けた歴史的なチャンスです。日本共産党は、北朝鮮の核・ミサイル開発を厳しく批判し、対話による平和的解決を呼びかけ行動してきました。

 米朝間の軍事的緊張が増していった昨年、日本共産党の志位和夫委員長は、節目節目で対話による平和的解決の方向を提起し、交渉を呼びかけてきました。2月にはトランプ政権が「戦略的忍耐」政策の見直しに踏み込み、外交交渉の可能性が生まれたことをとらえ、「米国は、北朝鮮との外交交渉のなかで非核化を迫る方針をとるべきだ」と提起。緊張が激化した8月には外交交渉による平和的解決を求める国際社会の動きに注目し、危機のなかでの米朝直接対話を提唱しました。

 11月にトランプ米大統領が来日した際には、米政権内で対話を模索する動きがあることをとらえ、安倍首相にその行動を後押しするよう促してきました。

 これに対し、安倍政権は、「すべての選択肢がテーブルの上にある」との米政権の立場を支持し、軍事力行使を事実上後押し。「対話のための対話は意味がない」と「対話否定」の立場に固執し、「圧力一辺倒」の立場をとってきました。南北首脳会談から米朝首脳会談へと、朝鮮半島の平和の激動のなかで、安倍政権は完全に取り残される事態になったのです。

 日本共産党は、この平和の激動を歓迎。今年4月6日には、「対話による平和的解決のチャンスをぜひ実らせてほしい」(志位委員長)との立場で、関係6カ国―米韓中朝日ロの政府への要請を行いました。とくに重視したのは、二つの点です。

 第一は、朝鮮半島の非核化と、北東アジア地域の平和体制の構築を一体的に進めることです。非核化は最大の目標にすえられるべきですが、これを実現するためには一方的に非核化を求めるだけでは話が進みません。

 朝鮮戦争の終結、南北、米朝、日朝の緊張緩和・関係改善・国交正常化をはかり、北朝鮮に核兵器を持たなくても安全だと感じさせる環境をつくる―地域の平和体制を構築することが必要になります。非核化と平和体制の構築を一体で進めてこそ、この二つを現実に実らせることができます。

 第二は、合意の実行方法は、2005年9月の6カ国協議の共同声明で確認した「約束対約束、行動対行動」の原則をふまえ、段階的に履行していくことが現実的だということです。

 南北首脳会談後の世界の動きは、この要請の方向とも合致しています。


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